もう来る事はないんじゃないか、そんな事を考えたら深夜0時でも出かける理由があった。
手元には地図もパンフレットも無かったが、ホテルのフロントマンには絵を描いてジェスチャーを交えて伝えた。 日本では
”鳥の巣”
で通じても中国でソレを何と呼ぶかなど知らなかったからだ。 この時間でもライトアップされているかと聞くと、明日の夕方行く事を薦められたが私には今日しかなかったから有無を言わさずタクシーに乗り込んだ。 夕食時、日本人数人で居た所、5人程の公安に取り囲まれパスポートの提示を求められた経緯があったから念のためGPSと一緒に持参した。
タクシーの運転手さんとはすぐに仲良くなって、中国語と英語と日本語の混ざったおかしな会話をしながら15分ほどで到着。 北京オリンピックのシンボルだ。この建物がライティングされ始めたのは数日前のこと。 今日を逃したらもう一生見れないだろうと思いタクシーを止め降りようとしたところ運転手さんは盛んに何かを訴えてくる。
車を停めたというだけですぐにパトカーがやってきた。 オリンピック前だからということで会場周辺は100m間隔で公安のおまわりさんが直立不動で立っており、厳重警戒態勢なのだ。 運転手さんはそれを知っていたからなのか、私と一緒に車を降りて公安の人達を説得し、恐らく
「写真を撮らせてあげて!」
みたいな事を言ってくれたのだろう。 おかげでその人達が並ぶ前で堂々と撮ることができた。私といっしょに歩き撮影に付き合ってくれた。 車の中で話してきた写真を撮りに行くのが目的であることを理解してくれていたようだ。
その後も会場周辺をぐるりと周ってもらい他のいくつかのシンボリックな建物を見せてもらって無事ホテルに戻ることができた。 チップを手渡したのは言うまでもないが降り際に2人で記念写真を撮って固い握手を交わした。 ホテルのフロントマンには撮って来た写真を見せてあげた。
言葉は通じなくても気持ちは伝わる...。日本人同士だって時にはすれ違いがある。肝心なのは相手を理解しようとする気持ちのようだ。
いろんな意味で今が旬の中国。そこで一生懸命働く人達や、いろんなものを食べている人達、お金持ちも貧乏人も、沢山の人達を見てきた。 日本人である我々はあまりこの国に良いイメージを描かないようだけど、 少なくとも私が感じた中国は人間らしく生きている人が多いという事だ。 |