自宅の引き出しを大きく開けたら、奥から数枚のフロッピーディスクが出てきた。Windows 95
の起動ディスクや何かのドライバソフトで、いずれも今となっては不要なモノだと一瞬で感じ取った。そんな事より、フロッピーを見て私が連鎖的に思い出したのは、高校時代に毎日遅くまで学校に残り、1年がかりで作り上げたスピーカーの設計プログラム。大事にしていたからきっと何処かにあるはずだと探し始めたのは夜も日付が変わってからだ。
引き出しの奥も、収納の中も、学生の頃使用していた各種教科書の間も探してみたが何処にも見つける事が出来なかった。でも、当時その製作過程の全てを書き残した50ページ程の論文が1冊出てきた。今では多分誰も知らない
”テラ3世” というワープロソフトを使ってPC9801でまとめた書類だ。
文章能力の無さは今にも増して恥ずかしいくらいだが、その内容を見て驚いてしまった。今現在の私が見てもほとんど
”犬がお星様” 状態で ”お前は博士か!” と突っ込みたくなるような難しい計算式が並んでおり、そこで作った計算式を1ヘルツ刻みでコンピューターに計算させるプログラムを組み上げ、対数グラフ上に描かれたインピーダンス特性を見ながらエンクロージャー設計に試行錯誤している様が伺える。確かこの内容は当時の地方新聞の記事に取り上げられたと記憶している。
結果的にこれは何なのか?という話になるが、簡単に言うと、世の中に売られているスピーカーユニット(スピーカーシステムではなくドライバーの事)を使って、その性能をフルに発揮させるためには、どの位の容量の箱にして、どの位のバスレフポートの直径にして、長さはどれ位にして、内部損失をどれくらい持たせるのが最善か?をコンピューターを使って計算させるプログラムである。
今思えばこれを高校生で作っていたのだから、プログラミングはともかく音響に関する知識は趣味の延長とはいえ我ながら良く勉強していたと思う。
その後約1年を費やして設計どおりのスピーカーを組み上げ、専門学校へと進学し、調子に乗って音響工学科の無響室を借りて周波数計測をしてもらった。実測した結果と私が組んだプログラムとでどれだけの誤差があるかが目に見えて分かる瞬間だった。結果的には4Hzのズレ。十分に世の中に送り出せるだけの完成度だった。
あれから15年。今そのスピーカーは友人宅で何かの台にでもなっているだろう。そして私の頭はそのプログラムを使いこなすのも難しいほどに退化しただろう。
今更スピーカーの設計をもう一度...とは思わないが、せめてそのプログラムを走らせて見たいと思った。 |