「さっき怒られてましたね」
と言われた一言が、今日はいつまでも頭から離れませんでした。
きっと私が話す電話を近くで聞いていたのでしょう。「いつが休みで、いつは出社します」
みたいな事を話していただけでも、受話器の向こうの声が聞こえない一方通行の会話では、受け止め方次第で怒られているように聞こえたのかもしれません。
私も気が付けば30も半ばに差し掛かっていて、振り返れば色々な仕事をさせてもらってきて、映像音声のクリエイターとして3日も寝ずに理想だけを求めて作品作りをする事もあれば、一般企業で機器の販売をお手伝いさせてもらう事もあり、またそれらの設計に携わる事もありました。どれも求められる技術は共通だったりするので全く畑の異なる仕事とは言い切れないですが、そこで働く人達の考え方とか行動力とか方向性にはかなり差があって私もあらゆる場面で刺激を受けます。
例えばクリエイターという仕事は時間にはルーズで数時間の遅刻は当たり前、そのかわり集中し始めたら時間を忘れ夜も寝ずに取り組む。どうしても納得のいく作品が出来なければ納期や発売を延期してもらう。一方、一般企業(その定義は様々ですが)の場合には10分前行動は当然で遅刻などもってのほか。残業をするには申請が必要でなるべく経費は節減。納期は絶対で品質よりも信頼が第一。
勿論これらは私の経験による大雑把な方向というだけで、どちらが良くてどちらが悪いということではありませんし、全ての企業やケースに当てはまる事でもありませんが、これだけ環境や考え方の異なる世界を私は運良くいくつもの現場で経験してきたので、その場に携わる人達の気持ちというのはそれなりに分かるつもりでいます。でも仮に一方しか経験せず同じ世界の中だけを見てこの歳まで生きてきたとしたら、今の私は何を正と捕らえ何に疑問を持つだろう?と不意に感じる事があるのです。
物事は見る方向を変えるだけで少し違って見えたりします。 |