カメラで室内を撮影するとき、多くの人は ”画面の中に入りきらない”
という経験をしたことがあると思います。
これは一口に ”標準レンズ”
と呼ばれる35mm〜50mm(35mm換算)程度のレンズは、 パースペクティブ(手前のものは大きく写り遠くのものは小さく写る遠近感のこと)こそ人の目に近いものの、 視界という観点で見れば人の目より遥かに狭い範囲しか写すことが出来ないためです。
人間の目の視界は年齢などによってもかなり変化するようですが、およそ120度程度と言われていて、 これをレンズに置き換えると10mm以下(35mm換算)という事になりますからコンパクトカメラなどではカバーできるはずがありません。
私が昔使用していたフィルムカメラ用レンズで使用頻度が一番高かったのが
NIKON の 20mm
でした。 この手の広角レンズは撮り方を間違えると全てが小さく写るだけのつまらない画になってしまいますが、 人が両目で見た景色と、ファインダー越しに見た景色との視界の差に、それほど違和感を感じずに使うことが出来ていました。
先の理由からすれば、20mmでも人の視界よりは遥かに狭いはずですが、ここが面白いところで、 人間の目は120度見えると言っていても、有効視野はおよそ20度位とされており、それはレンズに例えると約100mm。 肉眼で注意して見えている範囲はその程度の狭い範囲であり、その周囲はおぼろげながら見えているだけと言う事。 なので
20mm という焦点距離は私にとって 人の視界を表現するのに使いやすく感じたのだと思います。
ちなみに肉眼では、視界の中心付近はモノをカラーで捕らえていますが、視界の端のほうは色さえ判断できないんです。 試しに赤や青など色のはっきりした物を、視界から外れるぎりぎりのところまで外に出していってみましょう。 この場合視界から外れるまで色が判断できると思います。 では逆に、視界の外から中へ入れてきてみましょう。するとある程度視界の中心に入って来ないと色が判断できないはずです。
中から外に出していくと視界の全域で色が分かるのに、外から中に入れてくると視界の中心でしか色が分からない....。 人の目は脳がその色を記憶するので、中心で一旦色を判断できたものは外に外れていくまで色を感じますが、 視界の外から入ってくるものは脳が色を認識していないので目だけでは色を判断できないんですね。
写真を研究していくと、こうした人間の目の特性なんかも興味深く感じてきます。 |