昔のブログを読み返していたら、写真撮影時のRAW記録とJPEG記録について、後段のRAW現像における色補正の可能性について書いている記事を見つけました。
確か当初はRAWで記録する意味みたいなものを周囲より質問を受け検証したと記憶していますが、内容的には撮影時の露出を段階的に変化させ、後にRAWとJPEGでどの程度救済の幅があるか?という点に着目したものでした。つまり暗すぎる写真や明るすぎる写真を補正した際にどれくらい自然に修正できるの?という内容。
そして当時は露出による違いを検証した後ホワイトバランスの違いによる検証も行おうと考えていたはずが、どうやら実施していなかったようで...。そんなわけで今回はホワイトバランスの崩れた撮影データを後処理(RAW現像)する際、RAWとJPEGではどの程度違いが出るかを試してみました。またもマニアックな内容となりますため興味のない方は離脱もよろしいかと。
というわけでいきなり検証スタートの図。上に掲載している2枚の写真は、Sony α7RⅡによるRAWとJPEGの同時撮影の結果。標準的なマクベスチャートを適正露出で撮影し、ホワイトバランス(以降WB)を環境光にマッチするよう4,200K(ケルビン)に設定したもの。いわゆるこの撮って出し画像がニュートラルであり今回の検証の基準となります。
RAWはAdobe Lightroom Classicによるストレート現像結果で、この時点でRAWとJPEGにわずかな輝度差と色味の違いがある点はご容赦を。原因はカメラ内現像とLightroom現像のカラープロファイルが違うためと思われます。
しかしまあこの2枚を見比べる限りはどちらも合格ラインというか、どちらを納品しても文句は言われないレベルのアウトプットかと思います。
続いて、同環境光のまま、カメラのホワイトバランス設定を極端に変更し撮影します。検証フローとしては寒色(または暖色)に振って撮影したRAWデータとJPEGデータをLightroomに読み込み、撮影したマクベスチャートを使って後処理でホワイトバランスを補正します。
補正方法はなるべく正確な結果が得られるよう18%グレーをカラーピッカーでピックアップしニュートラルグレーへとシフトさせます。24色から構成されるマクベスチャートの場合、一番下段の右から3番目のグレーが反射率18%グレーですから、このポイントで全ての撮影データのホワイトバランスを調整することにします。
こちらが一番最初に掲載した色温度4,200Kの環境光に置かれたマクベスチャートをカメラのホワイトバランスをあえて2,500Kに設定して撮影したデータ。
RAWとJPEGを比較した時、やはり撮影データそのもののルックに若干の違いがあるものの、どちらも大きくブルーにシフトしていることがわかります。そりゃそうですよね、本来2,500Kの真っ赤っかな照明が当てられている前提の設定で撮っているのですから結果は青くなって当然です。
で、問題はそれらのデータをRAW現像でホワイトバランスのみ変更し、上で紹介した18%グレーをニュートラルへとシフトした場合に全体の色味がどう変化するか?です。結果がオレンジの矢印で描かれた下段のそれ。
RAWデータに関しては後処理によりホワイトバランスを調整しても極めて良好にニュートラルな色へ戻せているのに対し、JPEGは近しいところまでは戻せているもののチャート内の無彩色(ブラック、グレー、ホワイト)に対し青や緑が被ってしまっているのが目立ちます。18%グレーのポイントだけは正確にグレーが出せているのですがそ他の色に関しては全ての色に色被りが発生している結果です。
ではもっと極端な検証をしてみます。
こちらは上の検証同様にホワイトバランスを2,500Kに設定し、更に露出を2Stopアンダーに撮っています。ここまで酷い撮影をする人はあまりいないと思いますが、ホワイトバランスも合っていない、露出も間違えて暗く撮ってしまった...そういうケースを想定した検証です。
検証方法は先ほど同様、極端にカラーバランスの崩れたRAWとJPEGデータをLightroomに読み込み、後処理でホワイトバランスと露出をなるべく正確に補正しています。もちろん基準としたのは18%グレー。
どうでしょう? RAWに関してはぱっと見何事もなかったかのように正確に補正できていますが、JPEGはひどくカラーバランスが崩れこのままでは使い物にならないレベルです。専門的な知識など必要ないほどに明らかに撮影失敗しましたね!な結果。ホワイトバランスだけでなく露出も基準から大きく外した場合、後処理では補正しきれないレベルにまで影響が残るということがわかると思います。
あまり難しいことには触れませんが、RAWとJPEGの大きな違いはファイル容量だけでなく、ビット深度による階調の違い、記録されるダイナミックレンジの違い、色域の違いなどさまざまな要素がありますが、今回のホワイトバランスを後補正する際の許容幅の違いは、記録データのリニアリティによるものです。
RAWデータは光の入力(正確にはセンサーによるA/D変換データ)に対しリニアに記録しているのに対し、JPEGには何かしらのガンマ変換(カメラモデルに依存)がかけられたデータとして記録されているのです。リニアに記録するということは光の明るさが2倍になったらデータのサンプリング値も2倍として記録するという意味で、そのため明るさや色のバランス(RGBバランス)が崩れたデータでも後処理でリニアのまま正確に補正ができます。
一方JPEGはコンピュータディスプレイやテレビやスマホの画面で表示互換を持たせるための規格に則って、決められた色域やガンマに変換して記録されているため光の入力に対してリニアには記録されておらず、後処理で露出やカラーシフトを行うと思わぬ明るさや色になってしまうというわけです。
大事な撮影はRAWで撮っておけ!は間違いではありませんし、JPEGデータの後補正はリニアに反応しないため理屈ではなく出たとこ勝負みたいな処理となるのは言うまでもありません。見た目が良ければOK! で世の中はほとんど通用すると思いますが、こんなふうに原理を理解しながら後処理をしてみるのもまた楽しいかと。




