Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

今更ながらRAWとJPEGをおさらい

By
All Photo by inos

この写真を見て、「何だろうこれ?」と思った方は今日の内容はちょっと分からないかもしれません。逆に「おお、撮影露出の話かな?」みたいに感じた方は最後まで読み進めると何か収穫があるかもしれません。ご興味があれば是非。

時々仕事の延長でカタログ用の写真撮影やWEB掲載用の素材撮影を頼まれたり、私が撮らないまでも自身で撮影しなければならないため注意点を教えてほしいと聞かれる事があります。そんな時稀に聞かれるのが「JPEGじゃダメですか?」という質問。逆に言えば「RAWで撮る必要ありますか?」とも。なので今日は改めてJPEGとRAWの違いみたいなところを簡単に説明できればと。最近じゃスマートフォンでもRAWが撮れたりしますからね知っていて損はないかと思います。

RAWって何?という所から細かく説明しているとちょっと長くなってしまいますので、ここでは簡単に「RAW=撮影時にカメラが捉えた光の元データ」、「JPEG=RAWを元にカメラ内で作り出した画像データ」と定義しておきます。厳密にはちょっと違ったりもしますが概念的な所でご勘弁を。

今日はSony α7RⅡで撮影したRAWとJPEGデータの比較。カメラ内設定で記録方式を「RAW + JPEG」にしておけば1度のレリーズで両方のフォーマットを同時に撮影してくれますからそれを並べたのが上の写真。実際は露出違いを9段階に分けて撮影しましたが全て掲載するにはスペースを使いすぎますので代表的な4段階の露出を縦に積み上げています。見たままですが、上に行くほど露出アンダー、下に行くほど露出オーバー。

基準露出を中心にマイナス方向に3ストップ(光の量は基準露出の1/8)、プラス方向に3ストップ(光の量は基準露出の8倍)、参考までにプラス方向に4ストップ(光の量は基準露出の16倍)も。半分から左がRAW撮影、右がJPEG撮影ですね。

なぜこんなふうに露出を激しく変えているかというと、撮影時にこういう失敗だったりとか、逆光で手前の人がすごく暗くなってしまった!とかそういうユースケースを想定しています。

この段階で注目しておきたいのはRAWとJPEGには大きな差がないという点。つまり横並びの2つの画は露出にかかわらず似たような結果ですね。ではそれを撮影後の後処理でいじった場合にどういった違いが出るのかそれを比較したのが下の写真。

こちらは撮影したRAWデータとJPEGデータそれぞれをAdobe Lightroomに読み込みRAW現像をしたものです。といってもJPEGはRAWではありませんのでJPEGが持っている情報量に対しRAWと同じ調整をしています。ここで出てくる結果が見た目のRAWとJPEGの違いという事になります。

つまり簡単にいうと、最初に掲載している写真のようにすごく暗かったりすごく明るかったりする画像を後処理でどこまで復活できるか?という簡単比較です。復活と言ってもどこを目指すかという基準が必要ですので、今回は基準露出で撮影したコマをターゲットにしてその他の露出で撮ったものを全てそこに揃えていきます。

マイナス3ストップで撮影したコマは現像時にプラス3ストップ補正してあげれば計算上は基準露出に戻す事ができます。逆にプラス3ストップならマイナス3ストップ補正で基準露出に戻せます。つまり元データがちゃんと撮影時の情報をキープしてくれていれば露出オーバーも露出アンダーも関係なく全てのコマが同じ見た目に揃うはずです。(揃わないことを知っていて検証しているんですけどね)

結果はご覧の通り、RAWで撮影したものは縦4コマが大体同じ見た目に戻せていますが、JPEG撮影のものは明るさ色ともにかなりの破綻が出ています。適正露出を逸脱した写真がどれだけ復活できるか?ですからハイライトの白が飛んでいたのが戻せるか?とか、シャドーの黒が潰れてしまったところを戻せるか?という点が注目されますが、それ以外にもミッドトーンのカラーバランスが大きく崩れている点が重要です。カラーチャートの色が全然違うものになってしまっていますよね。私的にはJPEG画像のレタッチではこのカラーバランスの崩れが一番厄介だと感じています。

原因は詳しく説明するとちょっと難しくなってしまうのですが、JPEG画像というのは最終的にディスプレイに表示するための規格でガンマカーブが当たっているのに対し、RAWの場合にはシーンリニア記録(入力の光に対してリニアなサンプリング)がされているため、RAWの場合には後処理において調整値に対し比例関係で正確な結果が得られます。そのため今回のように撮影データを後処理で極端に調整した場合にもカラーバランスに大きな影響を与える事なく明るさだけを変化させる事ができます。これはホワイトバランスの変更などでは更に大きな差となって現れ、ガンマが当たってしまっているJPEG素材に対しホワイトバランスを変更しようものならハイライトはそれとなく色合わせが出来てもミッドトーンが不自然になってしまったりします。

ちなみに今回基準露出に対してプラス4ストップのコマを参考までに掲載したのには理由があって、実はプラス4ストップのコマになるとRAWであっても一部カラーバランスが崩れているんですね。これはちょっと意外な結果でした。データを解析してもチャンネル飽和が起きているわけでもありませんのでデジタルデータ的にはまだ余裕があるはずなんですけどね。センサーのカラーフィルターのリニアリティの問題でしょうかね。カラーチャートを置いている後ろの背景の草むらの緑がRAWであっても飛んでしまっているのはRAWとかJPEGとかの問題ではなくセンサーのダイナミックレンジの狭さが原因ですね。

というわけで結果的に難しい話になってしまいましたが、このような検証からも分かるように大事な撮影はRAWでお願いします!そういう事です。

コメントを残す

*
*
* (公開されません)