その勉強はすでに始まっているのではないですか?

By

思えば私も写真歴は長い方で、小学生時代のお遊び程度のスタートをカウントするならもう30年にもなりました。デジタルと違いフィルムの頃は撮れば比例してお金がかかったためタケノコのような勢いで上達はしませんでしたが、24枚や36枚という数字への思い入れは忘れませんね。

長年趣味としてカメラを持ち歩いていると時々周囲からそれに関するアドバイスを求められたりします。今日は学生時代の友人から「一眼レフの勉強をしたいんだけど...」という掴みどころのない感じの質問。聞けば「結婚式や披露宴の撮影、ステージ上の人物の撮影、街角スナップ」あたりが視野に入っているようで、恐らく聞きたかったのはどんなカメラとレンズを購入すれば良いのか!という事かと。

本人としては状況に応じいくつかのレンズを準備する必要があると考えており、性能や機能面を追求するあまり大きく重たいシステムにしてしまうと撮る事が嫌になってしまいそうで本末転倒。そのあたりのバランスがカタログからでは掴めないのかな?と推測した私。

正直これへの解は有って無いようなものです。趣味性を除外して考えたとしても、その人がどんな写真を想像しているかにより同じ機材を手にしても使いこなしは異なるからです。結婚式なら輝度差が激しいシーンが多いでしょうからα7sのように暗所に強い高感度カメラが有利でしょうし、ステージ上の被写体を撮るならきっと望遠レンズでぐっと引き寄せて撮りたいと思っているような気がします。スナップなら持ち運びに便利な小さく軽いカメラが快適ですし見た目にも圧迫感が無く街に溶け込むようなデザインも重要かもしれません。

こんなふうにそれぞれのシーンを考えてみると結婚式やステージ上の被写体のように撮りたいものがはっきりしている場合は一眼カメラは最強でレンズバリエーションも豊富です。一方、撮りたいものを見つける行為そのものを楽しむスナップではレンズ一式を背負って本気で挑む一眼カメラは返って使いづらく、ファインダーの構造からしても撮影範囲の外側が見えなかったり、シャッター音がうるさいなど適さないケースも多いです。

つまるところカメラ選びというのは自分がどんな撮影に重点を置くかが一番大切なのだと思います。いろんなものを撮ってみたいしせっかくなら綺麗な方がいい、持ち運びは楽チンで、出来れば見栄えが良くステイタスが感じられ、格安で手に入れられたら最高!とは誰もが考えますが、万能なカメラなど存在しないとしたら自分にとって譲れない撮影シーンが何かをはっきりさせる事が第一歩な気がするのです。しかし現実はカメラを買う前から撮りたいものが決まっている人の方が少なく、それならオールマイティーにこなせるようにとカメラメーカーは標準ズームをキットレンズとして組み合わせ、万人受けを狙っているのですね。

私の場合はスナップ中心なので大きくかさばる一眼の出番は少ないですし、肩から掛けていてもファッションの一部に見えるようなモデルを選ぶことが多いです。レンズ交換も出来ないカメラばかりですね。自分の足で距離を詰める撮り方が単焦点レンズの基本と考えれば、35mmでも50mmでもさほど困る事はありません。遠くのステージに立つ被写体を近くに寄せる事が出来ないなら自分がステージ前まで行けば良いだけです。あるいは、遠くに見たその景色こそが自分の目に焼きついたものなのだから、見たままを残すなら35mmで十分じゃないか!とも。望遠レンズで切り取るような絵ならたぶん絵葉書でも見繕えば綺麗なものが手に入るでしょう。その割り切りと勇気があるなら単焦点レンズ1本で何でも撮れると思います。

細かなことを言い出すとレンズ選びはカメラ本体より選ぶのは難しいと思います。テーブルフォトを撮るのに広角レンズはパースが付きすぎるため作画のバランスを取りにくいとか、最短撮影距離が結構長くて被写体に近づけないとか、ボケが綺麗・汚い、絞り解放で画質が著しく低下する、将来性のあるレンズマウントを選択するなど、気を使うポイントはいくらでもあります。ただこれらの事を人に聞かなければ理解できないのであれば、その時点でどんなレンズを使おうが一緒かもしれません。物事は経験から適切なる次の手段が考えられるわけで、それを人のアドバイスだけで決めるならそもそもそれを勉強とは呼ばないですよね。

カメラはいつしか機械から電気製品に代わり自動制御の精度も素晴らしく、それ故今ではカタログスペックで比較され語られるようになりました。しかしそれが人の感情や感覚を形に残す道具である以上、自分が望む作品がカメラ任せで量産できるわけではない点は電気製品になった今も変わりません。道具は人の心までは読めないのです。

COMMENTS

コメントはまだありません。

FacebookでシェアTwitterでシェアTumblrでシェアPinterestでシェア