Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

六本木アートナイト2019(5)

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All Photo by inos

毎年の展示でそろそろ飽きてきたような気もしますが、六本木アートナイトの定番と言えばこのサントリー響コーナー。

歴代のウイスキーが勢ぞろいで製造年による香りの違いを楽しめるだけでなく、こうして眺めてみるだけでもとても美しい輝きが場の雰囲気を盛り上げてくれます。

私はアルコールを殆ど飲まないのでウイスキーと言ったらチョコレートの中に入っているあれでしょ?ってなくらいの知識しかありませんが、それでも年代により香りが全然違う事も分かりますし、そもそも飲まない人がアルコールの香りを「良いカホリ」なんてふうに思えるのはウイスキーくらいのものじゃないかと思います。

小さなグラスの蓋を開けてクンクンと匂いを嗅いでみて「オェッ」っていう人は見たことが無く、皆決まって「良いにおーい」って発しますよね。

アートナイトの夜はここだけが少し大人な空間としてゆっくりとした時間が流れています。

ヒルズ内のフロアにもポイントポイントでアート作品が展示されていたりライブペイントが行われていたりします。ここで目に飛び込んできたのは結構大きなキャンバスに絵を描く作家さんの姿。

単なる絵にしてはディテールが細かすぎるので2歩も3歩も近づいてみてみると、どうやらこのキャンバスはお買い物をした時のレシートが無数に貼り付けられており、その模様をテクスチャとして活かしながら上に絵を描いていくというアイデアでした。

2日間のイベント期間で書き上げるところ、私が訪れたのは1日目の夜ですから作品としてはまだ描き始めた直後みたいなもので全体像までは分かりませんでしたが、後にこの作品の写真がSNSで飛んできたものを見たところ、このキャンバスにはリアルな蝶々の絵が完成しておりました。

このサイズの絵にレシートの柄はかなり細かな模様となって作用しますから確かに蝶々の羽や産毛のようにランダムに見せる対象には最適な技法なのかもしれませんね。

何やら大きな布を吊るしただけに見えるアート作品。「ただの布切れじゃん」そんなこと言っちゃいけません。アートって「これが芸術だ!」と言い切れば周囲が何と言おうと作品として通用するようなところがあると思います。むしろ、誰の目にも分かりやすい作品より一見意味が分からないような作品こそが個性として主張しやすいというか。

それは何もこの作品に対してだけでなく、芸術の世界って人と違った事をやってなんぼみたいな意識が作者の中には少なからずあると思います。だから見る側もそれをどう受け取るのが正解なのか、逆に言うと見る人が価値を決める世界ですよね。こういう作品を前にした時、自分がどんな事を感じ考えるのかそれが芸術の楽しみ方...とでも言っておきましょうか。


普段映像に関する仕事をしている身としてはこういう展示は親近感があってついつい細かな部分まで見入ってしまいます。3面のモニターを縦に並べ、大自然を映した空撮コンテンツがひたすら流れているだけですが、なんだかとても立体的に見えて不思議な感覚が味わえました。

ドローンで撮影していると思われる空撮映像は等速でゆっくり上下に流れており3枚のパネルを跨いでスクロールしていきます。表示解像度の事を考えるとドローンは前進ではなく横方向に飛ばしてこれは16:9映像を縦にして使っているのでしょうね。

立体感の理由はコンテンツのコントラストが高い事以外にも、3面のモニターの配置に工夫があって、それぞれを平らに並べるのではなくチルト角を付け1枚1枚のパネルをわざとずらした格好とする事で、正面から見た場合にもその段差のおかげで奥行き感を感じるようになるという目の錯覚を上手く利用した展示でした。なかなか面白い事を考えますね。

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