Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

軍艦は今も沈まずに

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All Photo by inos

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軍艦島を知ったのは雜賀雄二さんという写真家さんの作品を見てから。もうかれこれ十年以上も前の話です。それ以来私の中ではいつか行きたい場所の一つになったわけですが、今は無人島になっているだけでなく当時の建物が廃墟となり崩れ落ちてしまっていることから、危険区域につき立ち入り禁止とされていました。どうしても興味のある人は地元の漁師さんにチップをはずんで連れて行ってもらったのだとか。それでも規則には反していますけれど...。

それが2009年から限定的なエリアのみ立ち入りが許され今では観光気分で一般上陸ができます。私も昨日の今日で早速申し込んで行ってみました。上陸には細々とした規則があるため誓約書を提出する必要があります。

長崎県の長崎港から沖に20km弱の位置にぽつんと浮かぶこの「端島」という島は、周囲を岸壁で覆われ高層アパートが立ち並ぶことで、その外観がまるで軍艦のように見えることから通称「軍艦島」と呼ばれています。むしろこの島を知る人の中には「軍艦島」が正式名称と思っている方もいるくらい。

1810年から1974年まで炭鉱の島として周囲約1.2kmの小さな敷地に5,300人もの人が暮らしたそうで、人口密度は今の東京の9倍にもなったそうです。そしてその時代にこの小さな島で9階建てのアパートがあったり、学校や病院もあり、エレベーターさえもあったらしいです。驚くことに鉄筋コンクリートの建物はこの軍艦島に作られたのが日本で最初なのだそうです。それくらい当時の石炭には価値があったということですね。ドバイみたいなものでしょうか。それがエネルギー革命により石炭から石油へと需要が移ったことで出炭量も人口も減少し、1974年に無人島になったというわけです。

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廃墟の写真というのは以前にも撮ったことがあるのですが、ここ軍艦島は島全体がこんな具合ですから、なんと言うか ”人が住まなくなった家”  というよりは ”爆撃で誰も居なくなった” という恐怖を連想させます。ちょっと怖いんですよね。鉄筋コンクリートの建物がここまで無残に崩れ落ちるのか! というくらいボロボロになっています。これでも説明によれば人が何一つ手を加えることなくただ風化しただけだというのですから驚きます。

実は今回撮った写真は正直どれもありきたりな感じに仕上がってしまったのですが、本当はこの島にはもっと衝撃的な現場が沢山あるはずです。たとえば学校の教室には当時の机や椅子が散乱しているとか、子供が遊んでいたおもちゃがそのまま転がっているとか、病院や高層マンションが倒れかけているとか...。でもそういった危険な場所には一切近づくことが許されません。数年前まで立ち入る事すら許されなかったのですから上陸できただけで良しとしましょう。

写真を撮るうえで残念と感じたのは、撮影する時間や場所やアングルがかなり限定されている事。この島を撮るなら太陽の角度が非常に重要になると思うのですが、いかんせん島へ向かう船は午前午後で1便ずつしか出ていないため「夕日をバックに!」なんてわがままは一切言えません。島に滞在できる時間も1時間弱と決められています。帰りの船に乗り遅れればそれこそ一人無人島生活ですからね。

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島に着く船は案外大きく200人くらいは乗れると思います。3社ほどがツアーを組んでいてそれぞれ似たようなプランで似たような価格設定です。こうしてみると完全に ”観光地” ですね。船着き場の辺りは近代的に作り直されていてあまり無人島に上陸したという実感は湧きません。更に言ってしまうと、歩くルートもすべて鉄柵でガードされていて完全なる見学コースが出来上がっています。そして週末のように観光客が多い場合は船を降りた時点で3班くらいに分けられ、いくつかある見学ポイントを順繰りに見れるようローテーションされます。

どうしても一般の人を迎え入れるとなるとこれくらいしないと安全面が確保できないのでしょうね。何しろ ”風化” で鉄筋コンクリートが崩れているくらいですから。でも今回一番驚いたのは、我々が見たり写真を撮ったりしている間は1グループに係りの人が数名付いて、おかしな行動をしないよう監視されている感じでした。私などは納得のいく写真が撮れるまで同じところで何度でも撮り直すためとかく列の最後尾になったりするわけですが、そうすると私が歩き始めるまで係りの人は目をそらさず待ち続けています(もちろん私以外の人でも同様です)。勢いで柵を乗り越えたり、禁止されている行動をしないよう厳しく警備されているということなのでしょう。それもそのはず、今この島は世界遺産登録の申請中なんだとか。仮にそうなったらこの状態をキープすることが大変そうですね。

最後は船で島の周りをほぼ一周。念願叶って見ることができた軍艦島非常に満足度は高いです。やっぱりこの島は上陸よりも遠くから眺めるほうが価値がありそうな。

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