Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

心の中で静かに拍手を送った

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All Photo by inos

diary5067

東京国立近代美術館で開催されているジョセフ・クーデルカ写真展に足を運びました。著名な写真家の皆さんによる告知も11月ごろからされていましたが、私としては珍しく明日の最終日を目前にして慌てて駆け込んだ形。

入場券売り場はご覧の通り長蛇の列...。写真展でここまでの行列が出来るのは稀な事、全く興味の無い人は少ないでしょうから、皆思い思いの目線でここに集まってきたのかと思うと嬉しくなりますね。

ジョセフ・クーデルカの写真はWEBでは見た事があってもゼラチンシルバープリントを目の当たりにしたのは今回が初めて。始めの数枚で心を掴まれ、先に進むにつれ内容の濃さを理解し息を飲みました。一歩引かなければ視界に入りきらない2メートル越えのパノラマプリントに圧倒されるのです。大きいから圧倒されるというのもあるのですが、2メートルのプリントの端数センチのところにメインの被写体がレイアウトされていたりして、そこへ目線を導くフレーム構成に脱帽なのです。

モノクロプリントのみの展示会なのに見終わってからの充実感というか、記憶の中の情報量は他に例がないほどで、グラフィカルな表現と写実的な見せ方がうまく融合しているせいか、現代のデザイン的写真スタイルに上手く通ずるようにも思えました。

一つ一つの作品を見ても完全にモノクロを意識した光の捕らえ方をしているので、被写体と背景とのコントラストは的確ですし、モノクロだからこのアングルで撮ったよね? とか、モノクロだからこのタイミングまで我慢して撮ったよね? みたいな ”撮り手の気持ち” がそのまま伝わってくる作品が多いです。

それだけでも ”ぐうの音も出ない” 状態だというのに、今回は私の好きな組み写真による展示となっていたため、もうストライクもストライク、バットも振れず、頭にデッドボールでポカーンとなってしまった私。こんなに内容の濃い写真展が日本で開催された事に本当に感謝しましたね。ちなみに組み写真とは複数枚の写真を使って一つのストーリーを構成させる見せ方の事で、今回の展示では各作品を展示する距離でそれを上手く表現していました。よく見ると作品と作品の展示幅が均等ではないのです。しびれましたね。

”言葉を失う” というのはこういう事を言うのだろう...と自分自身の気持ちを落ち着かせながら見るのが精一杯だった今回の写真展。これが仮に舞台だったら間違いなく私はスタンディングオベーションで拍手を送っていたと思います。写真の内容も、見せ方も、館内のレイアウトも、写真の大きさも、素晴らしかった...。

館内別会場では、他の写真家による写真展も開催されており、そちらには今回の入場券があれば無料で入れたはずですが、感動の渦の中にいる私としては、「今は他の刺激を受けたくない」という理由でそのままクーデルカの写真集を購入して帰宅。写真集になってしまうと、大きさによる感動も、組み写真による演出も半減ですが、それでもあの素晴らしい作品を思い出す手がかりにはなってくれそうな気がして...。

仕事を休んででも行く価値のある写真展。明日までです。

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