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1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

MAGNUMの写真家が見せたプライベートフォト・HOME

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All Photo by inos

富士フイルムとマグナム・フォトによる共同プロジェクト「HOME」が代官山ヒルサイドテラスで開催されています。もう1ヶ月も前から楽しみにしていたイベントでこの日を心待ちにしておりました!なんたって世界最高の写真家集団であるMAGNUMの写真家達が16人も集まって世界7ヶ国を巡回する写真展ですからね、こんな大規模且つ注目の写真展は数年に1度あるかどうかです。

しかもそのエキシビジョンギャラリートークを私の好きな内田ユキオさんが行うというのですからカモがネギを背負ってやって来るようなもの。もう数日前から体調を整えておきました。

内田さんのトークの前には2017年よりMAGNUMの会長に就任した写真家Thomas Dworzak氏のトークも行われ、そちらへも途中参加させてもらいました。MAGNUMは画像の加工が当たり前なインスタ映えする現代写真とはちょっと違っており、写真家の意向にかかわらずむやみに写真をトリミングしたり不正確なキャプションをつけられたりすることを防ぎ、写真家の権利と自由を守り主張することを目的とした、グループとしてのアイデンティティーを保って存続している団体。

それだけにここに集まってくる来場者も写真に対し何処か真直ぐな感じの人が多かったですね。その代わりMAGNUMの作品は難しいものが多いです。単純に綺麗な写真を撮っているのとは違いますから意識を持って読み取る力が問われます。

表現は他者を必要とし、作家の心に何かが芽生えても受け取る側の人がいなかったら何も伝わらない...ここにお客さんがいなかったら作品というのは語りかける声をもたない。内田さんのトークの中にもありましたが、MAGNUMはそんなところから理解する必要があるように思います。

富士フィルムがスポンサーとなっている今回のイベント、MAGNUMと聞くととかく戦場を連想する事が多いですが貧困とか戦争が彼らのテーマではなくMAGNUMというのは視点。その視点を買ってくれる事があるなら時にそれは広告写真にさえなり得ると内田さんは語ってくれました。

そして今回のテーマはHOME。物理的な生活のスペースとしての意味だけでなく、精神的なつながりや拠りどころという意味を含み、誰でもカメラを持っている時代に世界のトップ写真家16人が同じテーマに向き合ったそれぞれのカタチ。

作家はどこに目を置いたか、何処に立って世界を見たか、何を書くかではなくどう語るか、そんな視点で作品と向き合うと技術や性能の追及みたいな素人じみたうんちくは語る意味さえ無い事を理解しますし、逆に自分ならどうするだろう?と深く考えるきっかけにもなります。

また、写真家達がステイトメントとして「これはこういうふうに見るんだよ」と言ったとしても写真が語っているものがあるのならそちらが真実。作者本人でさえ考えなかった事をも受け手が読み取り独り歩きする事さえある。当たり前のようで我々にも身に覚えがあり、世界を代表する写真家でさえ完璧にはコントロールの出来ない領域に写真の奥深さを感じました。

何かを善悪に振り分けず常にグレーな立ち位置から観察するだけの目線で撮る作家、カメラが介在している事を見る人に感じさせないよう写真家の背中を作品から排除して見せる作家、積み重ねて見ていくうちにどんどん声が膨らんでいく作家、全ての作家が全く異なるアプローチで仕上げた作品でありながら共通するのは ”MAGNUMという世界最高の写真家達のプライベートフォト” であるということ。

今日この会場で受けた刺激というのはとても大きなもので、それは16人の作家から感じた部分と、内田さんやトーマス氏の会話から感じた部分と色々ですが、場内の作品を4時間もかけ3周もして見直してみたところで記憶だけに残すのは難しく、展示作品の全てが掲載された写真集を当然のように購入しました。面白いのは写真展で見るのと写真集で見るのとでは同じ作品でも違った印象を持つという事。写真展と写真集、作家自身の意識はそういう所に表れるのかと、また始めからページを見返す楽しみを持ち帰った気がしました。

7月30日まで開催されていますので気になる方は是非。

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