Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

デジタルセンサーと熱ノイズの関係について

By
All Photo by inos

今日はα7RⅡのセンサー熱ノイズについての検証。簡単に言うと、デジタルカメラのセンサーが熱を持つとどの程度ノイズが増幅されるか!という実験です。少々マニアックな内容となります。

日常的に明るいところで写真を撮っている分にはまず問題にならないのですが、こと天体撮影のように長時間露光を行い後処理でコントラストを高めるような使い方をする人にとってはこの特性が重要なのです。この ”長時間露光” というところがミソでして、センサーは数秒、数分、数十分と露光時間が延びるにつれて熱を持ち、それが通常撮影では見られないようなノイズを発生させるのです。

今回はまず常温(気温20℃)の環境にてダークフレームを撮影しました。ダークフレームとはカメラへの光の入力ゼロつまり暗室撮影です。私が天体撮影で使うことの多い180秒(3分)というシャッタースピードをベースに、ISO感度1,600、20枚連続撮影(合計1時間露光)で、熱ノイズによる影響が1枚目と20枚目でどう変化するかを確認しました。1枚撮影で60分露光でも良いのですが、その場合どれくらいシャッターを開けているとセンサーが熱を帯びるのか判断しにくいですから3分×20枚としたわけです。実際の天体撮影もそういう撮り方をします。

いきなり結果ですが、上に掲載したのは上記条件で20枚目(つまり撮影開始からほぼ1時間)に撮影したダークフレームです。スマートフォンなどではほぼ黒にしか見えないと思いますが、パソコンでよく見ると黒い画像の中に赤、緑、青の細かな点が無数にあるのが確認できます(小窓にピクセル等倍画像を切り出しています)。これが熱ノイズですね。

ただこのほぼ真っ黒な画像だけ眺めていても話が進みませんから、このノイズを表示上極端に増幅させたものを下に掲載します。

こちらは撮影開始1枚目と20枚目それぞれのノイズ量を比較したフルフレーム画像です。くどいようですがこれらの画像は説明上分かりやすくするためにノイズを強調表示しています。

どうでしょう?明らかに撮影開始直後の1枚目のほうがノイズが少なく20枚目になると増加しているのが分かると思います。よく見ると1枚目は画面の両サイドにノイズが多かったのに対して、20枚目のほうはセンター付近で増加していますね。撮影を重ねるにつれセンサー全体が熱を帯びてくるのでしょう。

続いてこちらの2枚は、気温4℃の中で撮影したダークフレームです。気温以外の条件は全て先の実験と同じです。流石に安定的に4℃の環境を作るのは大変なのでこちらは冷蔵庫の中にカメラを2時間ほど放置した後そのままワイヤレスで撮影しています。

どうでしょう、最初の実験に比べて極端にノイズが減っており、同様の強調表示をしているにもかかわらず限りなく黒に近い画像になっているのが分かります。それでもやはり撮影開始直後の1枚目はほぼ黒ですが、20枚目になると全体的にノイズが増しているのが確認できます。冷蔵庫の中とはいえ流石に20枚(=合計60分)もシャッターを開けているとセンサーが熱を持ちノイズが増えるのです。

この結果から天体撮影は撮影条件が同じでも夏と冬では気温差がありますからノイズの出方が大きく変わってくることがわかります。

さて、ここまで読んできてこう思われた方もいるのではないかと思います。「お前はいったい何がしたいのか?」と。そうなんです私が今悩んでいるのはここからなのです。ここまでの実験で分かったことは、気温が低ければノイズは減る...撮影枚数が増えればノイズは増える...この2つです。

これらを天体撮影に当てはめると一つの課題が出てきます。それはダークフレームはいつ撮れば良いのか?という点。

実は今回撮影したこのダークフレーム、天体撮影ではノイズを消すための一つの手法として活用できます。星を撮影した後にカメラ設定はそのままレンズにキャップをしてダークフレームを撮る。後処理で星の写真からダークフレームの写真を減算処理してあげると星の写真にあった熱ノイズ成分だけ消す事ができるのです。

しかし天体撮影は同一被写体を複数枚撮影し、後に加算平均コンポジットにより高感度ノイズを消すという手法も同時に使います。となるとそれに見合ったダークフレームはどのタイミングで撮るべきなのか? 撮影枚数によって熱ノイズの出方が変わるとなると話はややこしいです。

厳密には天体を10枚撮影したのであれば、同様にダークフレームも同じ間隔(温度)で10枚撮影し、それぞれ加算平均コンポジットした後にダーク減算処理を行うのが良さそうな気がします。でもそれでは天体撮影に1時間掛かったらダークフレームの撮影も1時間掛かる事になりますからその間に温度は変化しちゃいますよね。何か最適解は無いものか...。

この辺りの精度を追求していくと一般的な一眼カメラで天体撮影をするのには限界が見えてきます。そのため、天体撮影を専門で行っているプロの方やハイアマチュアの方は冷却CCDなるセンサーを使うんですよね。センサーにペルチェ素子が付いていて直接冷却しながら安定的に撮影するのです。でもそんなのに手を出し始めたらそれこそ泥沼でして...。

コメントを残す

*
*
* (公開されません)