Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

フィルムの情報量が多いのではなくJPEGが少ないのです

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All Photo by inos

先日のエントリーでは、デジタルカメラ撮影で失敗した露出オーバーやアンダーの写真をRAWデータを使用して救済する方法を書きましたが、今日はもう少し積極的な使い方。

ここでは撮影時に適正露出で撮られたデータを使い、RAWの現像段階で多少の演出を盛り込もうという方向を試しています。上の写真は、真中が撮影時のままの適正露出、左は明るい部分のみを象徴的に見せるようミッドレンジ以下を暗く抑えたもの、右は画面全体を均等な明るさに調整したもの。いずれも明るさだけに注目したかったためRAWデータですがモノクロで比較しています。

さて、この3枚を見て不自然な点があるとお気づきの方はデジタルデータの加工経験があるのでしょう。ぱっと見は、暗い画、適正の画、明るい画、なのですが、トンネル状のハイライト部分に注目すると、なぜか全体を明るくしている右の画が一番暗くなっています。これはこの画像が単純な明るさ調整ではなくFill Lightパラメーターによって調整してあるからなのですが、SIGMA Foveonセンサーと純正現像ソフトSPPとの組み合わせではこの効果が絶大で、HDR合成にも似た一見ハイダイナミックレンジな結果が簡単に作れます。

Fill Lightとは、スタジオ撮影などにおいて被写体の暗く影になる部分の明るさを補うための補助的なライティングの事ですが、近頃のRAW現像ソフトではそれをデジタル処理の1パラメーターとして実装しています。でもその多くは実際のFill Lightの働きそのままをシミュレートしているためシャドー部の明るさだけを調整するような動作をするところ、SIGMA SPPはシャドー部を持ち上げた分ハイライトを落とすという面白い動作をします。未だにこの原理はよく分かりませんが、輝度に対してポジティブとネガティブを行ったり来たりするようなパラメーターです。ハイライトとシャドーを1つのパラメーターでフリップできるということは、撮影時の主光源と補助光のバランスを後から変更しているようなものですから、使い方次第では作品の演出に1役買うというわけです。

上の3枚の画は説明用に極端な調整をしたものですから、今回のケースでは真中の適正露出のままがしっくりきますが、時に左の画のように部分的な照明効果を狙ったり、右の画のように全体を説明的に見せたりと応用ができるのがRAWのメリットと考えます。これら後処理による作品作りはよくよく考えるとフィルムでの仕上げに似ていて、ネガからプリントを行う際に覆い焼きを使ったり、ハイキー・ローキーに持っていくなど、デジタルならではというものではありません。むしろ現時点で一番流通しているJPEGというデジタル画像フォーマットが写真の歴史の中で一番自由度が低い保存形式のように思え、今後のデジタル記録は後処理に使用するコンピューターの急速な進化を考えると、静止画も動画もRAW記録が当たり前になるような気がしています。

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