Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

金魚は見ていた

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All Photo by inos

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あまりの人気ぶりに昨年は会場まで到着するも行列の最後尾に並ぶ事すら断念したアートアクアリウム。

今年は事前に時間指定入場券をGETして本気で見る準備をしておきました。それでも今日は平日だからしてもしかしたらそんな準備の必要もなく入れるのではないか? との気持ちも何処かにありましたが、行ってビックリやはり入場規制が掛かっており行列の最後尾は地下鉄駅方面まで延びておりました。30〜60分待ちと書かれていましたから頑張れない事はないですが、入場後も1〜2時間見物する事を思うとちょっと疲れてしまいそうですね。

会場に入った直後の水槽を取り囲む人の多さは時に自分が身動きすらとれないような状況でさすがに閉口しましたが、それは多分金魚のほうも同様で、今年はこの会場に8,000匹もの金魚が集められたと言いますからだいぶ窮屈なハズで。そう、このアートアクアリウム2016は金魚をメインとしたアートイベント。

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始めのほうの小さな水槽を目にして感じたのは金魚と高輝度照明から作り出される影の美しさ。あれ?影ってこんなに奇麗だったかな?と。水槽の深さは20cm程だったと思いますが、水面ギリギリを泳ぐ金魚のシルエットがほぼ実物大で底に映し出される...良く考えてみると実はそれ自体がアートだったのだと帰宅後に気付きました。

一般的な照明は光が拡散される性質があるため、このような演出をする為には水槽から限りなく遠くに光源を離さないと影が大きくなってしまいます。懐中電灯の前に手をかざすと遠くに映し出される影は化け物のように大きくなってしまう..あれですね。

じゃあ光源を水槽から遥か遠い天井に配置すればそれでOKかというと今度は光量が弱くなってしまう。レーザー光線のように光束を変えないまま距離を離せられれば光量を保つ事が可能ですが、それにはレンズを用いて光束をコントロールしなければならないはずで、これらの水槽にはそのようなライティングの仕掛けがあったはずです。だから水面に浮かぶ水草のシルエットさえ奇麗に映し出される...。なるほどなぁという感じですね。そして水草を透過した光が薄い緑色の影を作っていた事、水槽の底が白い事でレフ版となり金魚が下からも照されて奇麗に見えていた事も後になって気付きました。

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場内には様々な展示の工夫が見て取れます。映画の上映に合わせたのか金魚水槽の真ん中にニモとドリーのキラキラ海水水槽が一つだけ展示されており、虫眼鏡の塊のようなレンズ効果によって生体がデフォルメされて見えるのを映画のキャラクターに見立てたのでしょうね。冷静になってそんなイメージをしてみると気付く事も多いのですが、実際その場では「ほぉ〜奇麗だね」と普通に見てしまうのは私だけなんでしょうか。

今回の展示でメインと言えそうな巨大な水槽はいくつかあるのですが、どれも見せ方が似ており、またそれぞれの距離が近く、そのうえ見る順路なども決められていない為、目の前に広がった光景に自分の中でどう順序付けて見れば良いのか整理するのに戸惑いました。場内が空いていれば赴くままに見れば良いのでしょうけれど、来場者でごった返しているためあっちもこっちもと行ったり来たり出来ないですからね。

私も以前アクアリウムという意味では海水魚を飼っていましたが、金魚に関しては蘭鋳くらいしか分かりません。そのためこれだけ沢山の金魚がいると途中から ”皆同じ” に見えてくるのですが、その中でも結構印象に残ったのが上の写真に写っている ”掃除機みたいな” 顔の出目金。ハンディークリーナーを金魚にしたらこうなりました! みたいなコミカルな感じが可愛らしい。

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恐らく本命の水槽はこれなんでしょうね。撮影しているカメラのレンズの関係で足下にある小さな水槽まで写っていませんが、ここだけで3,000匹の金魚がいるのだとか。餌をあげても到底全ての金魚には行き渡らない気がします。第一これだけ大量の金魚に行き渡るよう餌をあげたら水質が一気に悪化しそうなものですが、会期中はどうやってメンテナンスしているのでしょうね。これだけ奇麗に保てているところを見ると毎日掃除をしているのだと思いますが金魚に影響がないよう掃除器具を入れるのも大変そうですね。

こうした大きな水槽は写真に撮るのが凄く大変で、演出上全てLED光源が使われている為時間と共にバリアブルに色温度が変化しますし、時には赤や青の原色で照される為デジタルカメラのホワイトバランス調整では追従しきれない色になります。まして中で泳いでいる金魚が真っ赤だったりするものですからそこに赤い光など当れば完全に色飽和してしまいディテールなど無くなってしまって...。RAWで撮っていても後の現像処理が非常に大変です。

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ガラスで作られたすり鉢サイズの器に蘭鋳が1匹!みたいな展示も所々にあり、これはおそらく江戸切子デザインを含めたアート作品で、ガラスの色と照明と表面に施された彫刻のような柄で様々な表情を作っているように見て取れました。私的にはこれくらいが親近感がありアクアリウムに限らず自宅のインテリアなどにも応用出来そうで好きですね。出来れば容器の中にも何か工夫が欲しかった気もしましたが。

奇麗な水槽を我が物のように掴んで離さない子供が印象的だったり、ダイナミックな水槽が並ぶ会場の隅のほうにミニチュアサイズの水槽が並んでいて、ここでは逆にそれが新鮮だと近づいてみたら中の金魚は本物じゃなかった!という発見が面白かったり、実はこのイベント、人間が見る金魚の数より金魚が見ている人間の数のほうがずっと多くて、その様子を硝子越しに金魚に見られている気がしたり...写真を撮る事に夢中になりながらもその場に行ったから感じられる面白さがありました。

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江戸切子のグラスが天井からこれでもか!と言わんばかりにぶら下がった照明兼アート作品。シャンデリアのルーツは多分こんなところにあるんだろうと思わずにはいられない美しい表情。

ガラス表面に刻まれた江戸切子ならではの模様と色によって一つ一つの輝きに微妙な変化が出ているのが印象的でした。多分これは訪れたお客さんよりも作った人が一番感動しているんじゃないかと想像しますね。製作にどれ程の時間が掛かるか分かりませんが完成して光を入れた時の感動は忘れられないでしょうね。

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今回の展示の中で一番気に入ったのが最後に待ちかまえていたこの屏風のような展示。ジグザグに並べられた薄手の縦長水槽の背面にスクリーンが貼られており、表からプロジェクターにてフラット光を当てたり映像を出したり。つまりはアクアリウムと屏風型水槽を組み合わせたプロジェクションマッピングというわけ。これが実に面白かったですね。

金魚と屏風とプロジェクションマッピングの映像が全て夏の和で繋がっており、これを見るだけで日本が想像されるという仕掛け。これまたシンプルなようでかなり計算されているようで、まずはプロジェクターをお客さんの頭上のかなり高い位置から投影する事で金魚と影が重ならないように、つまり金魚が2倍いるように見える点。また、その投影する光の中に金魚そのものの映像を含める事で、スクリーンには生きた金魚とその影、そして映し出された映像の金魚の3種類が混在する演出になっている点。更には屏風型のスクリーンという事はプロジェクターに対して平面が無く全ての光は斜め打ちになっているはずなのにスクリーン全面でフォーカスが合っている点。なかなか面白い事を考えるものですね。

映像は随時変わっていくので途中で日の丸が出てくるような印象的なシーンもありましたが、私的には多くの人が感動している感じを伝えたくてにょきにょきと手が伸びているこの写真を掲載しました。

日本橋COREDO室町で開催されているこのアートアクアリウム、気がつけばそこに居た楽しい時間はあっという間でしたが、日が落ちた後の街の明かりにも非日常を感じる事が出来たりして記憶に残る1日になりました。

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