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1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

思いつきで奈良を旅する(6)

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All Photo by inos

奈良の最後は法隆寺へ。薬師寺から法隆寺への移動を公共交通機関で実現しようとするとなかなか良い選択肢がなく、かといって10km程度の距離がありますから歩くのも現実的ではない。ほぼ直行便のようなバスも1時間に1本はありますが、所要時間41分と言うものの、週末の渋滞時は1時間以上掛かるという。

そんな事もあろうかとこの日の朝、奈良駅前の観光案内センターで合理的な移動手段をリサーチしておきました。案内されたのは奈良駅を拠点として薬師寺まではバス移動、一旦奈良駅へ戻って今度は電車で法隆寺へ移動。これが時間的にも便数的にも便利らしい。バスの乗降は誰でも簡単な1日乗り放題券を購入し見せるだけでOK。薬師寺の往復にしか使いませんがそれでもお得な券。

そんなわけで薬師寺の後は奈良駅へ戻るべくバスを待っていたわけですが、そこで関西のおばちゃんと意気投合。私が今住んでいる東京の最寄り駅には早稲田大学のグラウンドがあり、聞けばそのおばちゃんは息子さんのスポーツの応援に時々来ているのだとか。東京では知らないうちに私と会っていたのかも知れませんね。その他薬師寺の話や法隆寺の話と盛り上がりました。

「これから法隆寺へ行くなら是非夕日を見てほしい! 私はあそこで見た夕日が忘れられないから...。」バスに乗り込む私をそんな言葉で送り出してくれました。

奈良駅で電車へ乗り換えたどり着いた法隆寺駅。しかしそこから法隆寺までは1km以上の徒歩が待っていました。最寄り駅には間違いないと思いますがその道中は特に見るものもなくひたすら住宅街や幹線道路を歩くだけなので体の弱い人にとってはちょっと不便だろうなと思いましたね。

ただ、到着して見れば流石に堂々たる貫録で ”歴史を形で表すとこうなる” とった存在感があります。奈良を代表するお寺との問いに殆どの人が法隆寺か東大寺と答えるというのも頷けますね。

土曜日にしては観光客が少なめでしたが考えてみたらお寺って普通はこんなもんですよね。京都の清水寺みたいに列になって見るとか順番待ちが発生するほうが異常なんだろうなと。私たちはこうした場を観光地と呼んでしまうけれど、お寺からすれば観光地ではなくあくまで人間的な思考を持ち敬虔に自己を見つめる場であり、そこを訪れる私たちにとっても仏様にお参りをする場所なわけですから。

ただ2日間奈良を巡り見てきたお寺の中ではどことなく一番落ち着きがあり、所謂 ”奈良” と聞いて想像する景観その物だったような気がします。恐らくそう感じたのは日本人の私だけでなく日本人以上に沢山訪れていた外国人観光客の人達じゃないかと思いますね。

バス停で話したおばちゃんによればここから見る夕日が...という事でしたが、この時期の法隆寺の拝観時間は16時半までとなっており、真っ赤な夕日を見るには少し早い感じ。1枚目に掲載した写真が15時半頃撮っていますからもう少し粘っていれば確かに情緒ある景色になったのかもしれませんね。流石にそれだけのためにずっとそこに立ち尽くしているわけにもいきませんので、この時見れるものが自分にとって最高の想い出と言い聞かせて見学しておりました。

修学旅行生も時々見かけました。タイムマシーンで時間を遡ってまるで28年前の自分を第三者目線で見ているかのようで何だか他人とは思えないような気がしましたね。まあよく見ると女子中学生ばかりのようなので私がその中にいたらおかしいのですけれど。

ガイドさんが台本を棒読みするかのような説明をしているのが聞こえてきました。ガイドさんも大変ですよね、仕事とはいえあっちのお寺もこっちのお寺も歴史まで含めて説明出来ないといけないわけですから。その言葉の一つ一つがどれだけ生徒の心に届いているか分かりませんが、これから10年20年後にこの日の事を思い出しながらまた奈良を訪れる人が出てくるとしたら、その時初めてその説明に価値を感じてもらえるのかもしれません。今回の私がそうだったように...。

 

日本一古い五重の塔だと思っていたら、木造建築としては世界一古い五重の塔がこの法隆寺だそうですね。外国人観光客の姿が多いのはそういう理由あっての事かも知れません。そしてその五重の塔に小さな彫刻があるのを見つけました。この古い塔を昔から頑張って支えています!って感じの鬼?がなんとも可愛い...。

そしてこれもお坊さんに聞かないとなかなか知らない事なのですが、法隆寺の五重の塔は実は屋根は6枚、薬師寺の三重の塔も屋根は6枚。なのにそれぞれ五重の塔とか三重の塔と呼ぶ。

法隆寺の五重の塔の場合、一番下にある瓦の載っていない板だけの屋根があってこれを裳階(もこし)と呼び、本来の屋根を雨風から守る役割を果たすと言われています。薬師寺の三重の塔の場合は裳階が各屋根の間にそれぞれ入っているので合計6枚に見えるというわけ。このへんのマメ知識も28年前のカセットテープから...。

今思えば2日間ではちょっと短かったかも...と思えた今回の奈良観光。得たものと失ったもの、変わったものと変わらなかったもの、止まった記憶と流れた時間の間には少しのギャップもあったけれど、この歳になったからこそ見えた景色があったような気がします。

次はいつ訪れる事になるでしょうか。なんだかそう遠くない未来な気がしています。

 

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