Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

暗い事の美しさを知る

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All Photo by inos

写真をRAWで撮るのが習慣になっている人の多くは、家に帰ってきてその日撮った写真を見返したりいじったりするのが好きなタイプだと思います。私のように撮影と後処理の2プロセスで一つの作品が出来上がると考える人は、食事に例えたらご飯とみそ汁がセットで和食!と呼ぶような、それくらいどちらも重要な工程と考えると思います。例えがあれですか...。

一眼デジカメを使うような人ならRAWという言葉はなじみ深い響きだと思いますが、一般的にコンパクトデジカメやスマートフォンで撮る写真はJPEGですよね。上記「撮影」と「後処理」の2プロセスで写真が出来上がるとしたら、RAWというのは撮影まで、JPEGというのは後処理までをカメラ内でやってくれる...そんなイメージで考えるとわかりやすく、JPEGの場合は最終的な見栄えを優先した撮り方なので、裏を返せば目に見えず不要な情報は捨ててしまうことでファイルサイズを小さくできています。汎用性は高いですがそれを素材として更なる後処理をしようと思うと捨ててしまった分の情報量が足りない...ということになるわけですね。だから後からいじることを前提とした場合はRAWで残したほうが有利なわけです。

また、日々後処理を繰り返していると撮影のコツみたいなものもおのずと見えてきて、撮影時はわざとオーバー(明るく)で撮っておき後処理で暗くする事でノイズを減らすとか、エンハンサーをかけずに撮っておき後処理でシャープネスをかけたほうがエッジが綺麗に仕上がるとか、その時の見栄えよりも後処理に有利な撮り方をすることも多々あります。星景写真なんて良い例で、仕上がりは夜空に満天の星って感じで綺麗ですが、撮影時は白に近いグレーの空として撮っていますからね。

なので、撮影した直後にモデルさんが小走りでカメラに近づいてきて「どんな感じに撮れてるの?見せて!」って言われても、その時点では後処理に有利な撮り方をした途中経過でしかないので、むしろスマートフォンで撮った写真のほうが綺麗に見えたりして困ることもあります。

一方、そうした ”仕上がり最優先” の撮り方や後処理を繰り返していると、大事なものを見失うこともしばしばあります。綺麗な夕焼けを撮ったらアンバーのグラデーションの階調再現はどうかとか、暗いところは潰れてないか、白いところは飛んでないか、コントラストの高いエッジにジャギーは出ていないか、レンズの色収差は補正する必要があるかとか、言い出せばきりがないというか、逆に後処理でそんなところばかり目が行くようになる...。

仕上がりが点数で評価されるようなものなら、たぶんこの先人間より機械のほうが優れた結果を出せるようになると思います。でも芸術の世界がいつまでもそうならないのは、表現というものは点数を追いかけるような作業ではないからだと考えます。

写真は随分長いことやってきましたが、最近ようやく暗いところの美しさ、暗いところから見た光の美しさがわかってきたような気がします。

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