Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

青ヶ島・八丈島・短期集中観光(4)

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All Photo by inos

青ヶ島に行くと決めた時、最初に思い浮かんだ目的は天体撮影でした。

長秒間露光により目に見えない光までも写し込む天体撮影では、都会の人工光による光害を考慮するとそこから100km以上離れないとカブりますから、東京に住んでいるとなかなか条件の良い場所を見つけるのが大変なのですが、本土から360km以上離れたこの離島はこの上ない好条件。

ただ、私は3日目の朝のヘリコプターで八丈島へ戻る予定でしたから、天体撮影に与えられたのは2晩のみ。初日は台風のような強風と雲で全く撮ることができず、2日目の夜は風こそ穏やかなものの雲がかかり所々に僅かに星が顔を出す程度。

それでも望みは捨てず、1時間おきくらいで宿から外に出て天候の行方を見守っておりました。

すると22時くらいからほぼ無風状態となり急に晴れ間が広がって希望の光が射してきたため慌てて機材一式を車に積み込み昨日紹介した “尾山展望公園” まで軽い登山。流石に深夜の山を一人で歩くのは怖いですが、ここには熊もヘビもいないそうですからその点は安心です。でっかい山ゴキブリは大量にいましたけど。

与えられたチャンスを逃すまいと急ピッチで撮影準備を進めますが、赤道儀のセッティングやらレンズヒーターの装着やら何かと時間がかかり、ひとまず構図を決めるために撮影したのが上の写真。

星景写真は地上と星空の両方をフレーミングする関係上特に地上のフレーミングが難しく、何しろ真っ暗なので地上の様子は撮影するまで全くわからず、明るいうちに行うロケハンの情報とカメラの水準器を目安に大体の構図を予想してひとまず1分から2分露光くらいで1枚撮ってみるのです。撮影結果は肉眼で見る以上のものが写っていますからそれを参考にフレーミングを微調整して本番に臨むのですが、この日はこの1枚が最初で最後の撮影となりました。

海に囲まれた島ならではの事なのか、雲の出現と移動がものすごく早く、露光結果を確認している間にふわぁっと雲が現れ見る見るうちに曇天に。その後も山頂で2時間待ちましたが晴れることはありませんでした。

そのためちょっと構図がイマイチだったり、複数枚同ポジ撮影によるコンポジットをしていないのでSNも悪いですが、少なくともこの島の撮影条件の良さを活かした1枚にはなったかと思います。想定外だったのは青ヶ島のカルデラ内には案外光量の強い工場が夜も光を放っていることでした。

写真の一番下でオレンジ色に光っているのが工場の光ですが、周囲にハレーションが出ていることからもこの日はかなり水蒸気が立ち込めていて完全なクリーンな環境ではなかったことが分かりますが、それでも青ヶ島なら冬の天の川がこれだけ写るのですね。

本当は早朝3時から4時半まで待って薄明寸前の夏の天の川や、月明かりに照らされた幻想的な島と星を撮りたかったんですけどね。今回はこれが限界でした。

楽しい時間はあっという間に過ぎていきます。3日目の朝を迎え、お世話になった民宿のおばちゃん、仕事のため来島し同じ民宿に宿泊していたお兄さん、レンタカーを貸してくれたガソリンスタンドのおばちゃん、ヘリを待つ間たまたまベンチの隣に座ったおじさん、観光スポットで時々一緒になった観光客、その誰もが気づけばいつのまにか皆家族のように親しげに話すようになり、時に力を合わせ協力し、同じ話題で笑い合う、実に人間らしい生活を送ることが出来ました。

私としてはこの島で予定していたいくつかの撮影が出来なかった事もあり悔しい思いもありますが、それ以上に得たものがあった気がして、なかなか来られる場所ではないだけに貴重な2日間を経験しました。

帰りのヘリコプターは偶然一番大きな窓側が確保でき、来る時には見られなかった島の全景を眺めることが出来ました。島全体が溶岩で出来ているような島ですから崩れやすく人が立ち入り難い場所。岸壁を固める事さえも難しいと思わせる環境。補強しても直ぐに崩れて海に沈んでいく...。

恐らく周囲の海も深いでしょうね。この島の傾斜で急なところは70度から80度くらいの断崖絶壁ですが、この角度で海に潜っていくと一体そこの水深は何メートルになるのか? 考えるだけで恐ろしくなります。もしも海の水を全部抜く事ができたら、この島はエベレストの頂上みたいな場所なんじゃないか?そんなふうにも想像できます。

2月の前半だというのに青ヶ島にはもう桜が咲いていました。

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