Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

若者が教えてくれた事

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All Photo by inos

最寄り駅前にチェーン店の定食屋が出来たのはもう半年ほど前の事。帰宅が遅くなる時などにはちょいちょい利用しておりました。

そんな定食屋に、アルバイトと思われる留学生らしき女の子が働いていて、いつも感心させられるのは、お客さんの元に配膳を済ませると、割り箸の入った箸箱をさりげなく開いてから去っていく事。鈍感な私は始めのうち気付かずに、たまたま開けっぱなしになっていたのかと思っていましたが、別のテーブルへの配膳を見ていて気付く事が出来ました。他の店員さんには無い行為ですから、その人なりの ”おもてなし” の気持ちなのでしょうが、日本人では無いのに日本の優しさを感じます。

そんな、店内に今日は中学生くらいの男の子が一人で入店してきました。そしてその子を追いかけるように中年の男性。片手には里芋(6個入)を持っていました。どうやらお使いを頼まれた子供が道中で里芋を落としたのでしょう...。中年の男性はわざわざ定食屋の店内にまで入ってきてその子供に手渡していました。

子供は軽く会釈をすると、片手に持っていた重そうなビニール袋に少し恥ずかしそうに里芋を詰め込んでいました。すると今度はヨーグルトやカップゼリーがコロコロと床に転がり、ようやくその時点で買い物袋の底が破れている事に気付きました。まるっきり、初めてのお使い状態でした。

中学生にもなれば、お使いに行く事自体少し恥ずかしくなってくるでしょうに、次から次へと商品が床にこぼれてしまってはもう恥も外聞もありません。慌てて拾い集め、何とか袋から落ちない程度に上手くバランスを取りましたが、恐らくそれが自宅までは持たないでしょう...。

そしてそこに現れたのがあの留学生のアルバイト店員さんでした。「これがうちにある一番大きな袋だけど大丈夫かなぁ。もう一枚重ねて入れてみようか...」 そんな会話が聞こえてきました。そしてその状況に感心しながら結果的に眺めているだけの私にまで、笑みを送ってくる余裕さえ感じさせる対応でした。

人はとかく損得勘定ばかり考えがちで、どうしたら自分に有利になるかとか、どうしたら楽が出来るかとか、現代社会ではそれを効率良くこなすような事ばかりですが、本当はお金とか名誉とか形のある何かとか、それらを手に入れるよりずっと ”人に何かを与える事” は難しい行為だと思います。見返りを期待して人のために尽しても、一時の利益はあっても自らの心の豊かさには繋がりません。

恐らく私より10歳以上も若いそのアルバイトの女の子から、短い時間に大事な何かを学んだような気がします。

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