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1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

次にくるのはビットデプス

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一昨日のブログ中で ”ラチチュード” という言葉を安易に使ってしまいましたが、ネット上では 「フィルムとデジタルではどちらがラチチュードが広いのか?」 とか 「デジタルでもラチチュードってあるの?」 など、様々な意見が飛び交っているのを見かけましたので、誤解を招くような表現を使ってしまった手前、念のため補足しておきます。

そもそもラチチュードとは、フィルム固有の ”明るさに対する許容幅” の事であり、ラチチュードが広いフィルムは、被写体の明るい部分から暗い部分までを再現する能力に優れ、逆に狭いフィルムは、黒つぶれや白飛びが出やすい傾向にあります。デジタルの世界ではラチチュードによく似た表現としてダイナミックレンジと呼ぶ事が多いですが、そちらは ”識別できる階調の最小輝度と最大輝度の比率” となりますから、許容幅を意味するラチチュードに対し、比率を意味するダイナミックレンジは、指し示す意味は似ていますが表現方法が異なると私は解釈しています。

フィルムとデジタルではどちらがラチチュードが広いのか?を真剣に考え始めると、実際のところ答えを出すのは難しいように思います。デジタル同士を比べるのであればデータを数値にしやすいですが、フィルムをスキャニングしてデジタル比較する場合には、スキャナの性能や方法、環境に左右されてしまいますし、何よりデジタル化した時点で有限値に抑制されてしまいますから、ビットデプスに左右されます。

ではプリントしたもの同士を比較すればよいかと言えば、デジタルであればプリンター性能、フィルムの場合には印画紙の種類等に影響を受けますから単純比較にはなりません。一般的には今でもデジタルよりフィルムのほうがラチチュードが広いとされていますが、比較の難しい2つのメディアを比べる事にあまり意味が無いでしょうから、それぞれの特性をよく理解した上で使い分けるのが良いかと考えます。

被写体の明るさに対し比較的リニアに反応するデジタル(グラフ右)に対し、Sカーブのように反応するフィルム(グラフ左)はコントラストが強い仕上がりになります。このグラフ(トーンカーブ、ガンマカーブ)の横軸が入力で縦軸が出力ですから、フィルムの場合には黒が締まり、白が徐々に飛んでいきます。勿論デジタルも実際にはこのグラフのように一直線ではなくカメラメーカーオリジナルの様々なカーブを持っています。こうして光に対する反応を考えるだけでも両者はあまりに異なる特性を持っていますから、許容幅はどちらが広いか?を頭で理解するよりも、現時点ではこれらの特性からなる体感的な違いのほうが大きいように思います。

ただ、近年の大型イメージャーを搭載するデジタルカメラで撮影したRAWデータは、明るさ(特にハイライトやシャドー)に対して驚くほど多くの情報が記録されている事に気づきます。今後デジタルはある程度の高解像度化が進んだら、次に来るのはビットデプスであることは明確です。基本的にはフィルムのトーンが好きな私ですが、デジタルの可能性という意味ではこれからの大型イメージャーの進化に期待しています。

※ 掲載したトーンカーブは説明上の参考資料であり、実際の特性と必ずしも一致するデータではありません。

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