南房総まで来てちょうど良い夕暮れ具合。館山自動車道を走っている時からフロントガラス越しに見えた低い雲。ついさっきまでそこに嵐がいたことを物語っていました。

この日の宿泊場所に見当をつけ、何はともあれ食事に有り付ける事も確認した後、海岸沿いの細い道をジムニーで走ってみました。MINIよりは大きいけれど普通車よりは小さいボディサイズはこんな時重宝します。そして偶然たどり着いたこの場所。光と空気感と静けさが上手くバランスした心地良い場所。

この日今年一番の夕日を見ました。

窓の小さな東京の部屋にこもっていては感じられない最高の時間がそこにはありました。光を好む植物が日光のもとで青々とした葉を広げるみたいに、人間だってこういう自然のパワーを全身で感じながら生きているんだと普段はあまり考えないような事を考えました。多分それは私だけでなくそこにいた誰もが。

少し波が荒かったのはやはり台風の影響でしょうか。寄せては返し、また寄せては返す、その間のわずかな時間だけ反射する光の中に電信柱が綺麗に映り込んでいるのがファインダー越しにも確認できました。

こんな時「写真が趣味で良かったなぁ」と感じるわけですが、その素晴らしい時間はほんの数分で終わっていきます。故にマジックアワーと人は呼ぶのでしょうね。だからこそその記憶はいっそう強く刻まれ、また撮りに行こうとも思うのです。

この場所はその名が示す通り天気が良ければ富士山が綺麗に見えるそうです。季節を選べばダイアモンド富士さえも。

この日そこに富士山のシルエットはこれっぽっちも見えませんでしたが、台風一過の立体的な雲と空は富士山から主役を奪ってみせたかのような存在感で決して不足はありませんでした。何より水平線がこうもはっきり見える海は久しぶりで．．．。