Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

今年は例年になく魅力的なNAB

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All Photo by inos

昨日からラスベガスでNAB SHOWが開催されています。NABは世界最大規模の放送機器展覧会です。日本でも例年11月には幕張メッセでInter BEEが開催されていますが、そのスケールは比ではないですね。私も2年前に行きましたが、日本では見かけないような機材があふれています。

世界各国の放送機器メーカーが続々と新製品を発表する中で、昨日の時点で気になったのはやはりBlackmagicのDavinci Resolve Liteですね。ポスプロ勤務経験のある映像クリエイターであれば数千万円クラスのカラーグレーディングシステムの頂点と捉えていたDavinchですが、近年ソフト販売になり、ついにはLite版として無償提供されるのですから信じられない時代になってきました。私も以前より編集ソフトの類は皆フリー版として無償提供すべきと訴えてきましたが、どうやら想定より早い時期に現実となりそうです。

そして同じくBlackmagicからThunderboltインターフェースを搭載したHD Dual Link対応モバイルI/Oもリリースされます。Thunderboltは先日Appleが発表したMAC Book Pro標準搭載の高速インターフェースですが、早くもその転送速度を活かしたI/Oの登場というわけです。ということは、このI/Oと先程のDavinciとFCPを組み合わせれば、早い話自宅でもプロ用信号が手軽に扱えてしまうわけですね。

更にHyper Deck Studioなる1Uサイズのデッキまでが発表されました。撮影時にSSDリムーバブルメディアに記録したファイルをこのデッキに装填することでGen-Lockに同期した再生が可能です。勿論9pinリモートコントロールに対応しUSBやEthernetポートも装備されていることから編集機とのファイル転送も可能なのでしょう。このプロダクツは明らかにAJA KiProを意識したのでしょう。

さて、先程のThunderbolt対応I/Oといい、Hyper Deck Studioといい、共に$995という破格です。放送業界やポスプロ業界の全ての業務にマッチする製品とは思いませんが、この傾向はコンテンツ制作の現場がますますパーソナルな方向へ進んでいると受け止めるべきです。アメリカ等では撮影や編集の多くのエンジニアがフリーで勝負していますから、こうした環境が個人レベルで構築できることは仕事の幅を拡げる意味で可能性に満ちていて、コンピューターの処理能力と共に実現レベルに有ることは明らかです。

一方日本はというと、私のようにフリーで仕事を受ける技術者も少なくは有りませんが、どちらかというと組織に属し準備された環境の中でクリエイトするケースが多いですから、このようなプロ用機材の低価格化は設備産業が成立しなくなる現実を考えると必ずしも歓迎すべき進化では無いのかもしれませんね。多分、一番苦しいのは国内のプロ用機器メーカーです。

でもどうでしょう?機材があるからモノ作りをするのではなく、モノ作りをするために道具を選ぶものだとすれば、発想とやる気に満ちた学生や、予算は無いけれども情熱を持ったクリエイターに、コンテンツ制作の手段が増える事は歓迎すべき事だと思いますし、逆にその道のプロであれば例え機材が同じでも仕上がりに差を付けられるだけの技量を磨くべきなのです。明日まで続くNABからまだまだ目が離せません。

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