Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

考えさせられた3日間

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All Photo by inos

1週間通い続けた幕張メッセ。3日間の本番も本日で終了しました。会場でお声掛けくださった皆様どうもありがとうございました。実を言うと、お顔は覚えていてもお名前が直ぐに浮かんでこない方や、何度かお会いしているのに会社名が出てこない...といった方が数名いらっしゃいました。大変失礼いたしました。

私にとってInter BEEは、最新機材の実機確認や情報交換の場であると同時に、記憶力の抜き打ちテストの場になっていたりして、全国各地の放送局でお会いしている方々や、機器メーカーの技術者の方々、以前自分がユーザーだった時に一緒に仕事をしていたスタジオ関係者の方々、過去に技術セミナーに参加してくださった方々等、狭い業界と言えども1日の来場者数は1万人を超え、更にそんな皆さんが日常仕事に使用している機器やフォーマットを把握しておいて、今後のお仕事に最適化したワークフローを提案しようなど、老化し始めた私の記憶力と理解力では性能が悪すぎて追いつけないのです...。皆さんぜひ名刺には写真を付けてください(笑)

何かとお祭り事の好きな私の事ですからInter BEEともなればテンションは上がりっぱなし。よくモーターショーなどで最終日のお昼位にはイベントコンパニオンのお姉さん達がその晴れやかな舞台を名残惜しむように泣き始める...なんてニュースを目にしますが、その気持ちは私も十分理解出来まして、やっぱり最終日には少し寂しい気分になったりします。ところが今年は少し違った感覚に浸っていまして、多くの方と技術的なお話をしているうちに、久しぶりに物作りに掛ける情熱みたいなものを感じて、自分がユーザーだった頃の事を思い出していました。

とかく世間は、どうやったら儲かるか? とか、数字を伸ばすためにはどういう作戦で行くかとか、他社との比較論で物事を語ったり考えたりするものですが、少なくとも映像制作業界の中ではそういった損得勘定抜きにして、良い作品を作るために時間や努力を惜しまない...そしてそれがごく普通の考え方として成り立っています。同僚が困っていれば手助けをしますし、仲間が作った作品は気になりますからお互いに見せあったりします。「この前の作品はこんな方法で作ってみたよ」とか「あの作品には○○って機材を使ったらしいよ」なんて会話からお互いの技術や知識が向上していきます。間違っても「それはうちの仕事じゃない」とか「誰が責任を取る」とかいうつまらない会話にはなった記憶がありません。

映画制作に携わる技術者の方から久しぶりにパワーを貰った気がします。

この3日間に色々なお話をさせていただいた中で印象深かったのは、何でもコンピューターで出来るようになったおかげで、職人と呼ばれる人の仕事が危ぶまれているという意見でした。これまで何十年も掛けて身に付けた技術が、場合によってはゲーム感覚でコンピューターと向き合う学生に負けてしまうケースもある時代です。プロが使う機材とアマチュアが使う機材の性能差が無くなり、「使いこなせる」というだけでは仕事にはならないのです。

それは機材メーカーにとっても深刻です。プロ用だから高額で売れていたものが、アマチュア用で事足りるようになれば安い機材しか売れません。不景気の影響でコンテンツの制作費が削られれば尚の事安い機材が注目されます。デフレを絵に描いたようなこの状況、見方を変えれば安い制作費でもこれまでのクオリティが維持出来るという事です。もっと言えば、これまでの制作費が投資出来るならよりハイクオリティなコンテンツが出来なければおかしいのです。

予算の中で出来る事を考えるのではなく、上質なコンテンツに値段を付けてもらう時代なのかもしれません。そのためには時に自腹でクオリティを上げるくらいの覚悟が必要だということでしょうか。

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