Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

思い出話と今見える未来

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日本の映像業界にノンリニア編集機が本格導入され始めたのは約16,7年前。映像制作関係者なら今では誰もが知るAvidさえ名前も知られていなかった頃。アビッドと呼ぶ人がいればエイビッドと呼ぶ人がいたり...。でもそんなAvidが日本に導入される前からD-VisionがありLightworksがあり...勿論ハイエンドのHARRYなんかはその少し上のレイヤーにあったわけですが、編集機の使い勝手という意味では私の経験上未だにLightworksを超えるものは出てきていない気がします。姉妹機のHeavyworksにおいてはWindows95以前のMS-DOSベースの編集機ながら既に4画面マルチ再生及びリアルタイムスイッチに対応していたのですからAvidが急速にその後を追いかけたのも頷けます。

時は変わり2010年の今現在、その程度の映像編集ならHD環境で自宅でも実現可能になりました。勿論、それらを扱う上でのプロのテクニックやノウハウまでは含まれませんが、システム環境として構築可能になったという事実は作り手の自由度が増え喜ばしい事です。ただ道具としてノンリニア編集機を考えた時、今では新機能を求めることが難しいくらい標準でも多彩な機能が実装され、正直ここ5年程は各社の製品はどんぐりの背比べ状態。映像音声が何ストリームまでリアルタイムで走るか?といった単純な数値比較でしか性能差が表せなくなっている現状は実に寂しいものです。世は空前の3Dブームですから、単純に考えると今の倍のストリーム数までは比較対象になるのでしょうが、コンピューターの進化が解決してくれそうな性能比較にあまり意味を感じません。

今後の映像制作におけるノンリニア編集機の在り方を考えると、それは数年前のオーディオの現場を見るのが分かりやすいと思っています。音と映像は扱うデータ量こそ違いますが制作フローのベクトルは共通です。映像に対し音は情報量が少ないですから、今、音の制作現場で使われているフローは数年後に映像業界に浸透する可能性が高いと考えています。

音の現場で使われているフローを考えると、使用するワークステーションやコントロールサーフェースはユーザーがチョイスする、アプリケーションに初めから実装されるエフェクトよりもサードパーティ製をよく使う、音効さんなどは編集タイムラインのままデータを持ち込む、などがあげられます。

これらを簡単に言ってしまうと、編集ソフト単品で使う頻度が低いということです。つまりは組み合わせの自由度が肝。

映像業界で今現在もしくは今後にノンリニア編集機の導入を考えているユーザー層というのは、とかくオールインワンで何でも出来るソフトを探しています。これはコンテンツ制作に掛けられる予算が減少傾向にある点に直結していると考えられますから、今後も変わらぬ需要があると思われますが、パソコンの性能が動画を扱う上で十分なスペックを纏った今となっては、ノートPCで作業が出来るくらいのハードウェア環境の自由度が必須かもしれません。ただ私が考えるこのクラスの編集ソフトの今後は、恐らくこういった単なる編集機能に留まらず、CMや映画などのハイエンドコンテンツ制作において、撮影現場での簡易合成用端末として用いられたり、メタデータ管理や仮編集用のデータコンバーターとして撮影直後から活躍するような気がしています。そしてそれらのデータを元に編集スタジオに取り込まれた映像音声データーの管理が行われ、編集用、合成用、字幕スーパー用、音効さん用、MA用、という具合に ”同時” 作業が実現できるのではないかと思います。既にこうしたフローはCM業界などでは定着していますが、全ての情報管理を編集機のみで行うケースは稀だと思います。特にメタデータ管理などは専用端末で行うことが多いのではないでしょうか。

私があえてメタデータ管理までを編集端末で行うと考える理由は、近年各映像機器メーカーは多種多様のファイル形式やコーデックを採用していますから、例えば撮影機材や環境の問題で複数のメーカーの機材を組み合わせて使うような場合に、撮影情報の管理が専用端末に縛られてしまうと他メーカーのファイルに関しては別管理が強いられ、不完全なデータを元に行われるその後の編集作業に多大な影響が出るはずです。特に近頃ではフィルムで撮るケースが減った分、撮影から完パケ納品までの時間が短くなりつつありますから、いかに効率よく同時作業を進められるかが重要です。となると複数メーカーであっても、ファイル形式やコーデックが混在していても、撮影時に同じ条件でメタデータ管理が出来る必要性が出てきますから、現時点でその一番近いところに10万円クラスの編集ソフトがあると思っています。

常に上を見るのがクリエイターの性ですから、今後も編集ソフトには新しいエフェクトやリアルタイム性能といった分かりやすい進化は求められるのは当然として、多種多様なファイルコーデックへの対応と、メーカー間によるメタデータの統一化がキーポイントになってきそうな気がしています。

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