Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

やった分だけの見返りがある

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All Photo by inos

夕べのblogは例によって月が沈むのを待つ間MINIの中からアップしたものです。その時はまだ空も澄んでいて絶好の天体観測日和だと思っていたのですが、夏と冬が一気に入れ替わったような気温差の激しい日だったためか、その後急激に雲が広がり、ものの10分で星一つ見えなくなりました。思えば前回の撮影も全く同じ条件でしたね。私の行く公園には前回にも増して同一目的のお客さんが5組来ていましたが、30分程待っても一向に雲の切れ間すら見えない状況に、次々ご帰宅の様子でした...。しかし私はそれだけが目的で野辺山まで行ったのに、カメラを出す事なく帰るなんてのはちょっと納得いかないわけで。駄目元で朝まで粘るつもりでMINIの中で待機!

するとどうでしょう、これまた前回同様25時を過ぎたあたりから急に空が開けて見る見る快晴のようなベストコンディションになったではないですか!。山の天気は変わりやすいという事ですね。

このタイミングを逃してなるものかと慌てて機材をセット。昨日の日記の写真にもあるようにMac Book Proも持参し、まるでスタジオでのテザー撮影のごとく重装備で本番スタート。とは言え前回と同じ事をしていては進歩が無いというもの。今回は撮影前からいくつかのプランを考えておりました。

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まずは上の図のような合成を前提とした撮影。天体撮影は写真撮影の中では恐らく一番暗い部類に入るんじゃないかというくらい光量の少ない被写体ですからおのずと高感度撮影を行うわけですが、その際最大の問題となるのはノイズの混入。被写体が暗いのを電気的に増幅して記録するわけですから当然ノイズも増幅されるわけです。一般的には現像段階でノイズリダクション等を用いてノイズだけを排除するわけですが、天体撮影は写っている星そのものがノイズのような小さなモノですからノイズリダクションが万能に使えないケースも多々あります。

そこでノイズリダクションを使わずに同等の効果を狙ったのが上記表のような方法です。同じアングルで複数枚の写真を撮っておき現像やレタッチ段階でそれらを合成してノイズ成分を減らそうという考え。普通で考えればノイズを取り除く工夫を真っ先に思い浮かべますが、この方法は全く逆の発想でノイズが出たもの同士をハーフMIXしてあげれば結果的にノイズ成分も均等に慣らされるでしょ!という発想。勿論原理上ランダムノイズに限りますが、ISO感度を上げて発生するノイズなんてのはこの方法がピッタリです。

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と言う事は今回の撮影で肝になるのは同ポジ撮影!。つまり何度撮っても同じアングルで撮れている事が大前提で、それが出来なければこの合成術は成立しないのです。ポイントは赤道儀の ”極軸合わせ”。基本的には赤道儀さえ使っていれば1度フレーミングした天体は時間が経過しても地球の自転に合わせて追いかけ続けるはずですが、それとて極軸がピタリと合わせられていなければズレが生じます。地球の回転軸と動きを一致させるには地軸の延長にあるとされる北極星をいかに正確に捕らえるか!という事になります。

オモチャのようなナノトラッカーには極軸合わせの望遠鏡など付いていませんから、前回はポーラメーターの目盛り読みで大体の方向を合わせて使いました。今回はもっとシビアに合わせないといけませんからちょっとした工夫が必要です。

一応おおよその方角はポーラメーターで合わせておき、そこからは赤道儀を高速モード(50倍速くらい?)で起動。カメラを北の空に向けて30秒から1分程露光。撮れた写真は数十分ぶんの軌跡となりますから回転軸の真ん中に北極星を追い込んでやればまずまずの結果が得られるはず。実際にやってみました。上記3枚の写真の赤矢印が北極星です。最初はかなり大ざっぱに合わせただけですから北極星は見事にぐるぐる回ってしまっています(左写真)。そこから調整し、結果を見てまた調整、それを何度も繰り返して回転軸のほぼ真ん中で北極星が治まるように追い込んでいきます。3枚目(右写真)の赤矢印の位置でほぼ回転軸のセンターで点になりました。それでもまだ微妙にずれていますが、そもそも本当の回転軸は北極星の位置から少しずれていると言われますからこれ以上の追い込みはあまり意味を成さないでしょう。

セッティングからこの回転軸を合わせるだけで30分以上を費やしました。

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さてここからようやく本題の合成用写真の撮影です。同じアングルを最低2枚、出来れば4枚、保険で8枚ほど撮っておけば万全です。私のフローは同ポジ撮影の素材4枚を準備し、それらをLightroom内でおおよその仕上げの方向性を意識しながらプリ現像。この時4枚のデータは全て同一条件で現像しなければ意味がありませんから現像パラメーターを同期させ4枚ともPhotoshopへ送ります。

Photoshopではそれら4枚を一度に合成するのでは無く、必ず2枚ペアで合成を行います。今回であれば「素材A」と「素材B」を合成。同じく「C」と「D」も合成。次にMixされた「AB」と「CD」同士を合成。結果的に「ABCD」の合成結果が出来上がります。この結果が上の2枚の写真です。左が1枚からの現像。右が4枚の合成結果。計算通り4枚からの合成の方がノイズ成分は少なくなっています。(この画像は説明上実際の画像を300%に拡大しています。写真をクリックして拡大画像で見比べてください)

そこそこ使えそうだという事が分かり一安心。ここまでのテストは、撮影している横のMac Book Proですぐに実行できるのですから便利な世の中です。今回はその前提でRX1にEye-fiカードを使用。レリーズケーブルから手を放し撮影が完了すると即座にワイヤレスでMacにRAWデータが転送されます。フォーカスのチェックや露出時間の結果を逐一確認します。

そんなふうにして撮ったオリオン座。大星雲もしっかり写っていますね。画面左で一際明るいのは木星です(下写真)。

この写真も4枚の合成結果を使用しており、後処理でノイズが減らせる前提であえてISO1600を使用しています。また、レンズ収差による周辺光量落ちも以前ご紹介したフラットフレームを用いた補正を行っています。

だんだん天体撮影のノウハウが身に付いてきたような気がします。今日ご紹介できなかったものは明日以降公開する予定です。

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