Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

入院して見えたもの

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All Photo by inos

diary4984

ゴーゴーと吹き荒れる強風の音に気がついて病院の窓から夜の景色を眺めたところで、鉄筋コンクリートの建物に囲まれた中庭はビクともしなくて、これから寒くなるのか暑くなるのかさえ想像できませんでした。時折そこを通り抜けて行く人がダウンジャケットを着込んで背中を丸めていましたから寒い夜だったのかもしれません。

やがて風は激しい雨を引き連れて病室の窓に叩きつけ、おかげで医療機器の電子音は昨日よりマイルドになった感じ。そんな中僅かに聞こえるハイヒールのコツンコツンという音。こんなふうに天気が急変するなんて予想できなかったんでしょうね。

自動販売機が備え付けられたロビーの片隅に、飾り付けのしていないビニールに包まれたクリスマスツリーが隠しきれずに顔を出しているのを見つけ、そこに込められた看護師さん達の想いとか、ツリーへの期待感みたいなものを知った気がして、なんだか少し切ない気持ちになりました。

大学病院と聞くとどうしてもその規模からして縦割り社会の縮図のような印象が先行し、どちらかというとシステマチックで情に薄いイメージがありますが、実際はそうばかりでもなく、医者の卵みたいな人達が一生懸命勉強している姿や、ボランティアで受付の整理をしている姿など、美しいと感じるところが多いです。

日曜日に救急外来で私を受け入れて下さった先生も、学生ではないがベテランまではもう少し距離を感じるタイプの人でしたが、それ故こちらも楽な気持ちで何でも聞けましたし、相談も出来ました。

私が「え〜また血採るの?」なんて聞くと申し訳なさそうに「そうなんですよ。すみません」と返してきて、「いえよくよく考えれば謝るのはこちらの方で、私はあなたに見てもらいたくて来たのだから、謝る必要など無いですよ。もしかしたらこの先長い医師人生の間にどうしても謝らなきゃいけないような時が来るかもしれない、その時までとっておきましょうよ。」次にその先生が部屋に来て同じような事になったらそう言ってあげようと決めていたのだけれど、実際は廊下ですれ違って「熱下がりましたか、良かったですね。」なんて逆に励まされたりして、やっぱり若くても向こうが上手だなと思ったのでした。

私のように直ぐに退院出来る人ばかりなら良いですが、そうでない患者さんに、あの窓の向こうの強風と雨の理由をそっと教えてあげられるような、そんな先生になってくれるんじゃないかと少し安心しました。

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