Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

教材が沢山並んでいる

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All Photo by inos

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今日までの開催だった事をすっかり忘れていたNHK技研公開。NHKといっても渋谷にある放送局のほうではなく世田谷砧にある技術研究所のほうです。昼過ぎに家を出て最短コースで現地入りしました。

年に1度開催される研究発表の場!という表現が適切でしょうか、アナログのSD放送からデジタルハイビジョンへの過渡期に注目をあびて以来、ここにきて次なる大きな波が押し寄せている感が伝わってきます。世界的に映像制作は4Kが注目されている一方でNHKさんは専ら8Kを謳っていますからね。今年の展示はその殆どが8Kに関するものでした。

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週末の日曜日とあって、会場を訪れているのは映像業界の人だけではなく、なぜか麦わら帽子をかぶったおばあちゃんなども見かけました。近所の人でしょうかね。電車の最寄り駅である祖師ケ谷大蔵からは、それなりに目的を持って ”気合いで歩かないと” いけないくらいの距離ですからわざわざ遠方から来たとは思えませんし。ほのぼのとしていて癒されました。

説明員の方はそういった一般視聴者の方から、マニアックな業界人まで、幅広い対応をされていて大変そうでした。「これも家で見られるようになるの?」という質問の後に「色域変換」の話だったりしますからね。

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今更8Kの映像を見たところで、目が釘付けになるような驚くほどの美しさは正直感じません。映画館のスクリーンサイズくらいまで引き伸ばせば性能差は出てくるとしても、家庭用テレビの50インチや60インチ程度であれば4K映像でも十分奇麗ですし、近年はHDRなる刺激的な映像表現が生まれてきていますから、一概に ”高解像度=奇麗” みたいな感覚ではないですね。私個人的には8Kはデジタルシネマの世界にどんどん進出していって欲しいと願っています。

とはいえNHKさんは来年早々に8Kの試験放送を開始すると謳っており、いよいよこれまでのBNCケーブルに変わる新たな接続方式が発表されましたね。見かけの形状はBNCとほぼ共通ながら24本のマルチ光ケーブルで構成されたU-SDI規格。240Gbpsの転送速度を誇りながら現時点で約100メートルまで延ばせるようです。しかもARIBが既に標準規格として採用し、SMPTEやITU-Rも標準化が進んでいると聞きますので、近い将来BNCの同軸に代わる存在となりそうです。4Kも8Kもコレ一本で接続! 楽チンですね。ブラックマジックさんの12G-SDIってどうなっちゃうんでしょう?

また、放送に向けての伝送関係の展示にも力が入っていました。実際問題、現時点の地上波デジタル1チャンネルあたりの帯域でどうやって4Kを送るの? っていうのが業界全体の課題だというのに、NHKさんは更に4倍の8Kですからね。ここをきちっと抑えておかないと絵に描いた餅になってしまうわけです。

8K放送を始めるからといって特別な周波数帯が与えられるわけではないという前提で、現在地上波デジタル放送に使われている周波数帯域幅の6MHzに収まるよう圧縮伝送する技術を展示していました。驚いたのは次世代符号化方式であるHEVC/H.265と現行方式であるH.264両方のコーナーが設けられていた事。結果は現行のH.264のほうが圧倒的に画質が良かった! その点を突っ込んでみたところ、H.265はまだまだチューニングが進んでいないとの事。これから実用化に向けてH.264以上を目指すのでしょう。

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個人的に欲しくなったのがこの13.3インチという極小8Kディスプレイ。将来は枕元に8Kですか? いえ、こういう展示はされていますが、あくまで制作サイドのモニターという位置づけでしょう。

それにしてもこのサイズに8Kを押し込む技術が地球上にあるのでしょうか? 先ほども書いたように、4Kと8Kの差でさえ、50インチ以上のモニターでなければほとんど分からない領域だというのに、このサイズに8Kを押し込んだらもう人の目ではドットを見る事は出来ません。実際こんなふうに誰もが画面に顔があたるくらいの距離で見るのですがドットは認識出来ません。Mac Book Proの15インチRetinaモデルが2880×1800ですから、それよりも小さな13インチでその4倍以上の解像度と考えるといかにこのディスプレイが凄いのかお分かり頂けるかと。これでHDRに対応させたら、もう窓にしか見えないでしょうね。(つまり実物と見分けがつかないくらいリアルになるだろう!と言いたい)

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ある意味今回の展示で一番刺激的だったのがこのホログラムメモリーなる未来の記録メディア。レーザー光でガラス板に対し2次元バーコード的に情報を記録するわけですが、ホログラムの名の通り、光線の入射角度を変える事で同じ場所に600枚ものデータを重ねる事が出来るという。つまり同じ層のデータでも読み取る方向(角度)を変えてあげれば別のデータとして読み取れる(書き込みも然り)というわけです。

説明員の方が手に持っている35mmフィルム程度のプレート一枚で何と数TB。85Mbpsの8K映像が約100分記録出来るというのだから驚いてしまいます。これって昔のSF映画に出てきそうな発想ですよね。透明のガラスのプレートをセンサーの上に載せるだけで、目の前の空間に映像がふわっと表れて...みたいな。

今のところライトワンスだけらしいのでアーカイブ用途に最適ですね。

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その他、まだまだ色々な展示があったのですが、モニターと色域関連の話だけで係の方と30分近く話してしまったので時間が無くなってしまい、地下フロアーなどの展示は殆ど流し見になってしまいました。

少しだけ紹介すると、上の写真のように22.2chオーディオのラウドネス計測や、16台のマルチカメラを1人で操作を行い、スポーツ映像などのタイムスライス再生を簡単に行う装置など、なかなか面白い技術が並んでおりました。

これだけ色々なものが展示されていてその殆どが放送用です。ここにシネマやCGの展示なども織り交ぜたら更に面白い技術展示になると思います。そう、Inter BEEなどと違うのは、この展示会はメーカーがビジネスの為に開いているわけではないので、売る事よりも技術アピールにスポットが当っている点が非常にワクワクするのです。その代わり、直ぐに買えるものなどは何も並んでおりませんけれど...。

ともかく時々こうしたイベントには足を運び自分の知識の肥やしにしていきたいと思います。

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