綺麗な景色を見に行くからカメラを持っていこう。娘の卒業式だからカメラを持っていこう。桜の季節だからカメラを持っていこう。どれも至極まっとうな意見でございます。ですが私がカメラを持ち歩く最大の理由は少し違っていて、その日自分の心が動いた瞬間を大小に関わらず残す事でその場で見られなかった誰かに伝えられそうな気がするから。

例えばそれが目の前で起きた大事件なら素直に記録するもよし、何でもないようなものでも見る角度を変えたり目を細めたりする事で一瞬でも光るものがあるならそれを教えてあげるために撮るもよし、自分が言葉で伝える代わりに1枚の写真が語ってくれるならそこで主役が引き立つように色んな要素を工夫して入れ込みます。

昔はスナップ写真って何を撮って良いのかよくわかりませんでした。そしてその良し悪しも。写真というものを ”綺麗に撮る！”　という観点で向き合っていたら多分ずっと撮れないのがスナップ。2度と再生しない現実の中に残したい瞬間を見つけるのがスナップ。カメラの最新機能がほぼ役に立たないのがスナップ。

だからそこに写し出されているものは他のどの写真ジャンルより作者が見ていた現実に近い気がします。