Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

北海道短期集中観光 2018.8(5)

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All Photo by inos

北海道観光2日目後半は日本最北端にいろんな未練を残しながらもスイッチを切り替えて一気に南下しました。南下と言ってもまだ道北に違いありませんが午前中まで滞在していた宗谷岬からは160kmほど離れた名寄市へ。

この土地を目指した理由の一つはそこに日本屈指の天文台があり一般公開されているのを事前調査していたからに他ならず、しかも天文台ですから夏は21時半まで、冬でも20時までオープンしており、仮に長距離移動にアクシデント等で遅延が発生したとしても十分楽しめるスポットとしてこの日の最終目的地に設定していたのでした。天文好きな私っぽいチョイスじゃないかと!

この ”なよろ市天文台きたすばる”  は現時点で日本で2番目に大きな反射式望遠鏡が自慢です!。1番は兵庫県にある ”兵庫県立大学西はりま天文台” だそうでそちらは望遠鏡のミラーの直径が2メートル、こちらのきたすばる天文台は1.6メートル。いずれにしても馬鹿でかい!のです。そしてこの天文台が一般公開されており係の人から説明が受けられるというのですからテンション上がります!

天文台内部に入るのはこれが初めて、それも日本で2番目の...ドキドキ。エレベーターを上がり扉を開くとジャーン!あっけなく表れた壮観な佇まい。もはやこれは宇宙で地球の周りをまわっているヤツじゃないかと勘違いするようなシルエット。

早速係の人が動かしてくれました。制御画面をポチポチするだけでこの人工衛星みたいな鏡筒がギュイィ~ン、ギュイィ~ンとあっちを向いたりこっちを向いたり。勿論上の屋根も同時に動きますからもうこれは軍艦の上についている巨大な大砲と同じじゃないかと! それだけで感動しました。

私も素人ながらマニアックな質問ばかりするので係の人も戸惑いながら色々教えてくれました。まず1.6メートルと言われているミラーは上の写真の北海道大学と書かれている文字の奥あたりにあり、一旦そこで受けた光は望遠鏡の先端付近にある黒い塊の中に設置された2つ目のミラーに集められ反射し、その光が再び1.6メートルのミラーの中心部に位置するセンサー部分に集められ実像として見えるという仕組み。

望遠鏡の裏側に回り込むとこのメカメカしさに圧倒されます。望遠鏡と言えど接眼レンズから目視で見るだけではなく、基本的には様々なセンサーを取り付けてデジタルデータとして取り出すのが現代の手法であり、研究の目的に応じて受光するスペクトルが異なったりするものですから、このメカ部分は都度タイプの異なるものに載せ替えるのだとか。望遠鏡部分は天文台側が管理し、センサー部分は大学側が管理する...みたいな感じでそれぞれ役割分担が異なるようです。

また1度に使うセンサーも1つではなくいくつもを切り替えて使えるよう、望遠鏡から左右に伸びる緑の翼みたいな上にも別のセンサーが設置されており、調査内容に応じて光の方向をミラーで反射させ、中央のセンサー、右側のセンサー、左側のセンサーという具合に使い分けるそうです。勿論光学的に目視で確認する場合はすべてのセンサーから光学接眼レンズの方向へ光を切り替える...そんなふうに運用するそうです。

ここまで仕組みが見えてくるとそれはそれで次々疑問が出てくるもので、私の機関銃のような質問は次々係の人へ...。

センサー部分を付け替えるという事は当然その重量はセンサーごとに異なるはずで、これだけ巨大な望遠鏡だとその重量も相当なものですから赤道儀のように天体を追尾するとなると重量バランスの崩れはモーターへの負荷に直結し追尾精度を保つのが難しくなるはずです。質問への答えはバラストによりバランスを取っている!でした。望遠鏡先端にある緑色のリングが実はバラストになっており、センサーの重量に応じてそのリングの枚数を調整しなるべくモーターに負担が掛からないようにしているそうです。ジンバルと考え方は同じですね。

我々素人が使う赤道儀と大きく違うのは、赤道儀の場合は真北に向けて軸を出しますが、こうした天文台は真北に向けて軸を出すわけではなくあくまでXY座標で位置を特定しサーボ制御しています。赤道儀感覚で使おうと思ったら地上からの角度も35度くらいにセットする先入観を持ちますが、実際天文台はそんなふうに傾いていませんから完全に座標制御ですね。上の写真の緑色の土台そのものを動かしています。

この日は雨こそ止みましたが曇り空だったため実際に星を見る事は出来ませんでしたが、使用する場合は湿度の変化や、空気のゆらぎを最小限に抑える目的でまず外気温と室温を同じになるまで調整してから屋根を開けるそうです。とにかく天体観測の大敵は空気の揺らぎ...。

こちらの天文台には1.6メートルの巨大望遠鏡以外にこうして設置されたいくつかの望遠鏡でも天体観測が出来るようになっています。あちらが北海道大学管理ならこちらは完全に天文台側の管理下にあるそうで、時々ある天体ショーなどでもここを開放し一般の方々に楽しんでもらっているようです。

こちらの望遠鏡、写真では小さいように見えますが実際は大砲みたいな大きさですべて床に固定されていますから勿論すべてはコンピューター制御により星を捉えます。近くの原っぱまで担いで行って覗いて見よう!というお気楽なものではありません。観測時は建物の屋根が電動でオープンし、ここはそのまま屋外感覚で観測が出来るというわけです。

望遠鏡の周囲にいくつかの小型望遠鏡がついているものがありますが、あれの目的は...。多くの方が「大体の位置を追い込むためのスコープ」とお考えでしょうが、こちらでは少し目的が違いました。だって目的の方向に追い込むのはコンピューターとサーボ制御で勝手にやってくれるわけですから低倍率のスコープを使って目視で追い込む必要などないのです。

実際の運用は、スペクトルごとにスコープを変えて観測するような使い方だそうです。映像で例えたら、Rチャンネルだけ見るとかGチャンネルだけ見る!みたいに特定の波長だけを抽出してみるような使い方が出来るそうです。それを応用すると土星の輪っかだけ見る!みたいな事も出来るのだとか。なるほど奥が深いですね。

館内1Fは展示スペースになっており、所謂資料館みたいな感じで天体に関する様々な説明がされています。こちらはさすがに係の人がついてくれるわけではありませんから自ら集中力を高めて読み進む必要があります!。隕石の展示などもあるので天文に興味がない人も比較的楽しめるよう工夫されていました。

そして館内にはプラネタリウムもありますから1日に何度かそのシーズンのプログラムが上映されています。私も天気が悪く本物の星空が見れなかった腹いせに ”これでもか!” っていうくらいテンションを高めて見てきました。「ROSETTA ~彗星の謎に迫る~」というストーリのプログラムはCG含め球体スクリーンを活かしたプラネタリウムならではの大迫力なコンテンツで非常に面白かったです。勿論施設の方が説明してくれるその日の星空に関しても ”ザ・プラネタリウム” って感じで良かったですね。(上映中は撮影禁止のため写真はありません)

ここ名寄は北海道の中でも一番寒い場所と言われているらしく、冬の最低気温はマイナス35℃を記録したこともあるそうで、こうした施設の管理は大変でしょうしここで研究を続けるのも生半可な気持ちでは出来ないでしょうね。説明してくれた係の人はいかにもマニアックな感じの方で終始楽し気に色々教えてくれました。こういう仕事もあるんだなぁそんなことを感じましたね。これでまた私の天体写真熱が刺激された気がします。

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