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スマートフォンJPEG撮影時の悩み

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All Photo by inos

近年はスマートフォンのカメラもかなり性能が良くなって、写真好きな私もそろそろスマホ一つで勝負しても良いんじゃないか?と思うくらいです。実際、一眼カメラを持っていけないような状況においては手持ちのiPhoneで撮影している事も少なくありません。カメラにとって軽さと小ささは正義ですからね。

そんなスマートフォンのカメラですが、未だに使いづらいと思うところがあり今日はその点について。

上の写真は私のiPhone11で撮影した写真。一見綺麗に撮れていて記録用写真としては十分なのですが、私的にちょっと気になるのが赤丸で拡大した部分。どうです、皆さんは気になりませんか?

ヘリコプターのローターや尾翼の周囲に僅かに白い縁のようなものがついているのが分かるでしょうか? これはリンギングと呼ばれる現象でして、スマートフォンに限らずどんなカメラでもJPEG(HEIC・HEIF含)で撮影すると発生しやすい現象です。ではもう少し詳しく見てみましょう。

この写真は壁に新聞紙を貼り付けてiPhoneで撮影したJPEG画像です。黒い文字の周囲に1枚目のヘリコプター同様の白い縁が出ているのが分かります。部分切り出しをした拡大画像で見ると一目瞭然ですね。

ではいったいこの白い縁取りは何なのか? という事になります。答えを先に言ってしまうと、これは撮影後のシャープネス処理の副作用のようなものでして、スマートフォンで普通に写真を撮った場合、シャッターを切ってからメモリーに保存されるまでの過程の中で現像処理の一環としてシャープネス処理が行われています。

シャープネスというのは具体的にどんな処理がされているかというと、簡単に言えば単なるコントラスト調整です。とはいえ画全体のコントラストを上げてしまうと輝度に対する印象が変わってしまいますから、明るい部分と暗い部分の境界がはっきりしている箇所(今回ならヘリのローターと背景の空や新聞紙の文字の縁)を一定の条件で抽出して、その境界のごく狭い範囲のコントラストを高めるのです。仕上がった画像を遠く離れて見ると各部エッジが強調され鮮明化されたように見えるというわけです。

そしてこのリンギングの発生こそが写真を後処理でいじる人にとって使いづらい点だったりします。例えば撮影後の写真をPhotoshop等でレタッチする際、画全体の明るさやコントラストを調整し始めると被写体のエッジが強調され過ぎてしまって仕上がりがザワザワな感じになってしまうのです。「あ、スマホ画像だな!」って実感する瞬間。

解決方法はただ一つです。スマホで撮影する際に勝手にシャープネス処理が掛からないようにするしかありません。答えはRAW撮影。JPEG撮影でもスマホのカメラアプリにシャープネス:OFFみたいな設定があれば良いんですが普通はついていないですからね、シャープネスが掛かる前のRAWデータで保存するのです。

こちらの画像は同じiPhoneでRAW記録したもの。私のiPhoneは三世代ほど前の11ですから標準カメラアプリでRAW記録が出来ないため、Adobe Lightroom mobileアプリにてDNG RAW撮影を行っています。

最初に紹介したJPEG撮影の画像と比較して文字の鮮明さや壁のテクスチャが全体的に甘くなっているのが分かります。これがシャープネスが掛かる前の画像というわけです。(スマホ画面で見ている方は画像をタップして拡大して確認してください)

参考までにこちらはフルサイズセンサーのSony α7RⅡで撮影したRAW画像です。スマホとはセンサーサイズが全然違いますが一眼カメラのRAW画像と比較してiPhoneのRAWがどの程度のものか見比べられるよう同じ条件で撮影してみました。

これら3種類の画像を1枚ずつ眺めてみても違いが分かりにくいため、同一箇所をクロップし拡大表示したものを並べたのが次の画像です。

いかがでしょう? パキッとした見た目のiPhone JPEG画像に対し、iPhone RAWデータは画像全体がボヤっとして眠い感じではあるもののリンギングの発生は最小限に抑えられていると思います。α7RⅡのRAW画像と比較してもエッジ処理に関してはまあまあ良い感じじゃないでしょうか?

でもこれじゃボヤボヤで解像感が足りないじゃないか!と言うなかれ。このボヤボヤのRAWを現像して一番左のJPEG画像のようなパキパキの画を作るのはいとも簡単に出来ます。ただその処理は明るさ調整や色調整を行った後の最終段で最適なアンシャープマスクを適用します。ここが重要、その他の調整が終わってから最後にシャープネス...。

逆に一度パキパキになった画像から柔らかいエッジの画像は作れません。だからJPEGで撮ってしまうと後処理でざわざわになってしまう。そういう事です。

とはいえスマホ撮影を毎回RAWで行うかというとなかなか悩ましいところ。特にiPhoneの場合JPEG撮影でないとナイトショットとか使えませんし、RAW撮影の場合ノイズ処理も後段で行うことになりますから、RAW現像ソフトのノイズリデューサー性能も要求されます。実はiPhone内のノイズ処理って結構優秀なんですよね。

この辺りまで総合的に考えるとやはりスマホはJPEG撮影でシャープネスの強度を変えられるのが一番実用的な気がしますが、Appleさんは絶対そんな機能付けてくれませんよね。

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