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1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

SEL2070GでRAW記録した際の歪曲収差補正(LR)

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All Photo by inos

今日のブログは先日購入したばかりのソニー製レンズSEL2070Gについて。少々マニアックな内容ですが自分の備忘録を兼ねておりますのでよろしくお付き合いくださいませ。

今回発売されたレンズSEL2070Gは従来の標準ズームレンズのカバー域24mmから70mmのワイド端を一気に20mmまで広げた新世代ワイドレンジズーム。それでいて小型軽量であり、諸収差を最小限まで補正したうえでF4通しという明るさを確保しているのですから最新光学設計の凄みが伝わってきます。

しかしレンズの光学設計というのはあっちを立てればこっちが立たず...という具合で、解像度を優先すればボケが汚くなったり、収差を補正するためにはレンズ構成が複雑になって大きく重くなったりするものです。

それはこのレンズだって例外ではないはず...。発売前から私が目をつけていたのはワイド端付近で撮影した際の歪曲収差の出方について。

こちらの画像は規則正しく並んだタイルの壁をSEL2070Gのワイド端20mmで撮影したものです。記録フォーマットはJPEG。撮影時、ファインダーや背面液晶にリアルタイム表示されるライブ画像もこれと同様のものでプレビュー出来ています。

私が気にしていた歪曲収差(樽型や糸巻き型のような画像の変形)は最小限に抑えられており、これであれば真っ直ぐなものが真っ直ぐに写って、建築物や屋内を撮影しても気持ち良い写真になるはずです。

ただ、これはあくまでJPEG撮影でのお話。私のように普段から全てRAWで撮影する場合はどうか? 気になるところです。

はい、こちらが記録フォーマットをJPEGからRAWに切り替えた以外は全て1枚目の写真と同じ設定で撮影したもの。どうでしょう? 凄まじいまでの歪曲収差が発生しています。いやぁここまで出るっていうのは近年稀ですよね。これがワイド端を20mmにまで広げた代償でしょう。

周辺の光量落ちも目立ちますし、よく見れば中央部と周辺部で若干色温度のズレも出ているようです。

この結果を見てしまうと「高性能レンズなんて謳っていてインチキじゃないか!」と思われるかもしれませんが、これがデジタル時代のレンズ設計の常識なんですよね。なぜならこうした歪曲収差というのは後段の処理で比較的簡単に補正して直せるためです。

デジタル処理で補正できる部分はそちらに頼って、むしろ電気的な処理では直しづらいその他の収差を光学設計で優先的に対策しておきましょう!というのがデジタル時代のレンズ設計。基本的に後処理が出来ないフィルム時代のレンズとは設計思想が違うという事です。その代わりフィルム時代には撮影後にピクセル等倍にまで拡大して画質をチェックするような習慣はありませんでしたね...。そう考えると今でもフィルムとデジタルの両方で使えるレンズを作っているライカがお高いのはなんとなく頷けるというものです!

さて、こうした歪曲収差に対する補正ですが、先に掲載したようにJPEG記録であればカメラ内でリアルタイムに処理されるため補正後の理想的なアウトプットが得られるところ、まだ画像にする前のディベイヤーされていないRAW記録の場合にはカメラ内でその補正が掛けられませんから今回の検証結果のように歪曲収差がそのまま現れてしまうというわけです。

ではRAW記録をした場合はどうするのか? 答えは簡単で後処理(RAW現像)段階で自分で補正すれば良い話です。

こちらの画像は上のRAW画像をAdobe Lightroomのゆがみ補正である程度修正したもの。完璧な補正には程遠いですがLightroomのゆがみ補正だけではこれが限界です。これ以上を望む場合はPhotoshopへ持って行って部分補正を試行錯誤するしかありません。

本来であればRAW現像ソフトをリリースしているサードパーティメーカーに対し、カメラメーカーはレンズプロファイルを公開しベンダーはそのプロファイルを元に自動補正が掛けられるようにするのですが、今回のレンズは発売されてまだ数日ですからね、現時点ではAdobe Lightroomにこのレンズプロファイルは入っておりませんで...。手動にて補正作業が必要になるというわけです。

ただ厄介なのはズームレンズの場合は撮影時の焦点距離によってこの歪曲収差の出方が変わるため、現像ソフトで手動補正するにも毎回同じ補正値を入力すれば良いというわけではないのです。今回の例では20mmワイド端をサンプルとして掲載しましたが、これが35mm付近ではほぼ収差は無くなり、50mm、70mmと望遠側にいくにつれ今度は樽型から糸巻き型の収差へと変化します。

そのため今回のテストピース撮影では、各焦点距離におけるAdobe Lightroomの歪み補正値を割り出すべく、基準となるいくつかの焦点距離について撮影をしてきました。ただその全ての画像をこちらに掲載したところで同じような白いタイルの画像が並ぶだけで退屈ですから、自らの備忘録がてら補正値のみ公開しておきます。

SEL2070G Adobe Lightroom レンズゆがみ補正参考値

20mm:+50
28mm:+12
35mm:−1
50mm:−7
70mm:−10

これからしばらくの間、テーブルフォトから観光地での記念写真まで、このレンズで撮影する全ての写真は上で導き出した値を参考に歪曲収差を補正する事で真っ直ぐなものは真っ直ぐ仕上がるはずです。それもAdobeさんが最新レンズのプロファイルに対応してくれるまでの回避策ですけどね。

しかし今回こうした検証をしてみて改めて感じたのは、カメラ内のレンズ補正っていかに凄い事をやっているかという点。レンズプロファイルを元に正確に補正を行いリアルタイムにファインダーに表示させているのですから(秒間60コマ、120コマ?)。

そしてその補正プロファイルはカメラ本体ではなくレンズ側が持っているという事も分かりましたね。だって私の所有しているα7RⅡはもう5年以上前に購入しているにも関わらず、ボディ内で最新レンズの補正が行えているわけですから...。ボディ側は画像処理エンジン、それを適正値で動かすためのパラメーターをレンズ側が持っている、そんなところでしょうか。

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