Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

クオリティの行方

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All Photo by inos

映像業界ではここ数年急激に高解像度化の波が押し寄せています。テレビ放送が地上波デジタルへ切り替わったところで一旦は落ち着きを見せたように思えましたが、既にフルHDという言葉は過去のものになりつつあり、業界全体は4K以上の解像度が普及傾向にあります。

仮に完パケがテレビのOA用途だとしても、撮影自体はHDサイズ以上で撮りましょうというのが今後のスタンダードになるでしょう。大きなサイズで撮っておくことでリフレーミングが可能になったり、スタビライズ等の画像補正に有利に働いたり、時には撮影時のカメラ台数を減らすことすら出来ますからメリットは盛りだくさんですね。

ところで、私の中の持論ではありますが、「映像業界の今は3年前のオーディオ業界にある」というのがありまして、早い話、オーディオ業界のトレンドが3年遅れで映像業界にやってくるという理論です。これも全てにおいて当てはまる話ではありませんし、年数も3年の時もあれば5年の時もありますが、多くは信号処理がデジタルになったことでほぼ当てはまるようになりました。世の中にDAWが認知され広く使われ始めたのを追いかけるように映像業界のNLEも広まりましたし、ファイル収録に関しても同様です。

するとどうでしょう、オーディオ業界では一時期ハイビット、ハイサンプリングレートがもてはやされた時期が有りましたが、今はハイエンドが非圧縮192kHz 24bitあたりで落ち着いていて、これ以上急速に伸びる気配はありません。勿論、ポータブルオーディオプレーヤーへの音楽ファイル収録数確保のため、オリジナルファイルの1/10程度にまで圧縮して使っていたAACやMP3形式に関しては、音質改善が見直され近頃では1/5圧縮程度に嵩上げされている傾向はあります。

ところが最近ネットにあふれる情報を見ていると、映像とオーディオで決定的に方向性が違ってきているのを感じます。Instagramに代表される写真加工ソフトの多くは、画質を低下させる方向でそれを ”味”として表現しています。私自身もそういったルックの作りこみや、仕上がった作品には大いに共感しますが、一方で真面目にクオリティを追求するのがオーディオの世界です。売っているCDの音質を ”味” と呼べるほどにローファイ化して聞いている人は見たことがありません。勿論レコーディング段階でアナログエフェクターを使うのは日常的にあるとしても、個人レベルで言えば、数えきれないようなアプリが出まわる映像業界ほど積極的ではないように思います。

昔の8ミリフィルムの映像に音質の悪いオーディオが聞こえてきても違和感はありませんが、映像を消して音質の悪い音だけを聞くのはなかなか耐え難いものがあります。組み合わせる事で相乗的に成り立つ演出について上手く説明できるような解は私の中にありませんが、視覚と聴覚の関連性って面白いですね。

だとすれば映像が更に高画質化した後には、またオーディオのクオリティは一段と上が望まれることになるのでしょうか。

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