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1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

今年も用賀で最新技術に触れる

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All Photo by inos

毎年この時期は用賀にあるNHK技術研究所へ。お茶の間で見るNHKのテレビ放送に関しては渋谷の放送センターが母艦となって運営していますが、こちらの技術研究所はその名の通り最新技術の研究ばかりを行っている施設。それが年に一度「技研公開」と言う名のオープンハウスを開催しており、映像業界人のみならず一般の方々にもその成果をお披露目しております。

私も人にモノを教えないといけない立場上、最新技術の動向や今後のNHKさんのロードマップを最低限把握しておかなければならないため今年も足を運びました。

数年前からNHKさんが取り組んでいる裸眼3D技術。テーブル埋め込み型ディスプレイやスマートフォンによる立体映像はいずれも特殊な光学フィルターをディスプレイ上に貼り付けて実現するもの。一般的な「視差方式」ではなく、物体の放つ光線を再現する「ライトフィールド」方式を採用。物体が放つ様々な方向の光をディスプレイ上で再現し、視聴位置に応じた3D立体視が行なえる点が特徴で、視聴者の左右の目の間隔や視聴距離による影響が大きかった視差方式の弱点を克服しているらしいです。

ただし「様々な光の方向」というのがくせ者で、聞けば100もの異なる光の方向をディスプレイ上で再現するらしく、CG映像ならまだしも実写でそれを実現しようとすると最低でも上の写真のようなカメラの数が必要となるという。これだけ並べてもせいぜい50台程度のカメラ数ですから100の光には足りないわけですが、足りない分は保管して補っていると言っていました。とは言え50台でも多すぎですけどね。プロ野球ナイター用の照明じゃないんだから...という正直な感想。

白黒映像を自動でカラー化する技術の展示も行われていました。先ほどの3D技術に比べると随分現実的な感じ。静止画の分野では白黒からのカラー化というのは少し前からある技術ですが、こちらは動画でそれを実現しているというのがトピックス。

いやいや動画だって1フレームずつ見ていったら静止画でしょ!と突っ込みが来そうですが、確かに理屈はそうなのですがこうした後処理となると話は別で、停止させて見ている分には綺麗な仕上りでも、再生して動かしてみると前後のフレームの処理のばらつきが目立ってしまい使い物になりません。動画における合成や色の処理というのはなるべく人の手を介在させずに前後のフレームを機械に補完させながら行うのがコツで、それを今回はいよいよ動画用の技術として実用域までもってきたというわけです。

過去のデータベースを参照し色再現を行うとの事でしたが、機械が色を読み間違えたりする事もあるためその修正方法等を詳しく聞いてみたところ、好きな色への置き換えは比較的簡単に出来る事が分かりましたが、選択範囲、つまりは塗りつぶしの範囲変更は意外と大変そうでした。まあ処理的にはバックグラウンドで動いているマスクの修正を行うという事になりますから簡単な筈ないですよね。

NHKさんお得意の8Kデモンストレーション。世の中はようやく4Kが広まりつつあるという段階なのにNHKさんはこの秋から8K放送を開始する事が決まっていますから、その点においては今回の展示のなかで一番具体的な技術でロードマップもきっちりと描けている分野。このブースで行われたデモンストレーション自体は内容の薄いものでしたが、いよいよ始まるんだなぁという実感には繋がった気がします。ただ何処にもHDRというワードが使われていないのが少々気になりますが...。放送向けHDRの規格であるHLGはイギリスのBBCと日本のNHKによる共同開発の筈なのに、何処のブースもノータッチって...。

スポーツライブのタイムスライス映像デモもここ数年のNHK技研さんの取り組みとして全面的に打ち出している分野です。沢山のカメラで同時にスポーツ選手を狙って、”ここぞ” と思うハイライトシーンを後処理で時間を止めて放送する技術。よくバレーボール選手がスパイクを打った瞬間を静止画にして、でもカメラアングルだけはクルクルと変わる映像って見た事あると思うのですが、あれを実現しているのがこうしたシステムですね。

最後に、写真には撮ってこなかったのですが、今日の展示会で一番印象的だったのはハイコネなる技術でした。簡単に言うとハイブリッドキャストの成れの果て...という感じ。外出先などでスマホで見ていた映像を帰宅後にスマホからテレビに指示を出す事でテレビ側で高画質映像の続きが見られるという技術。

まあそこまでなら今どきYouTubeでも実現しているのですが、ハイコネはその先にテレビの枠を超えた使い道があるという打ち出し方。例えばテレビで見ている映像のプロパティをスマホの画面でリアルタイムで確認したり、ネットショッピングチャンネルなどでは、生放送中に「紹介している商品の別のカラーのものが見たい!」と指示を出せば自分だけにそのカラーの商品が転送されてきたりと使い道はいろいろあるようです。

ただ私の個人的感想としては、自宅でキャストを使っている人、またはこれから使っていこうと考える人がどれだけいるだろう...という素朴な疑問。いずれは多くのテレビ放送やネット配信はアプリを介してキャストという技術が多く用いられるようになるとは思いますが、そういった新しい使い方を覚える事がおっくうだと言う人もいるでしょうし、田舎のお婆ちゃん家みたいに、自宅にLAN環境が無いという人にとってはそういったネットワーク環境に頼った進化というのは逆効果になる可能性も有り難しいところです。

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