Simply mini J

1日5分、その日の自分を振り返る時間を作りなさい。
    昔そんな話をお坊さんから聞いた。

六本木アートナイト2019(1)

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All Photo by inos

今日明日は年に1度のアートの祭典、六本木アートナイトです。六本木ヒルズを始め東京ミッドタウンや周辺の美術館が連携して夜通しアートを楽しみましょうという企画。もう数年連続で開催されていますね。

森美術館などは朝6時まで開いていますし、ヒルズ周辺はお祭り騒ぎであることは確かですが、とは言え大晦日のように都内の電車まで臨時運行しているわけではありませんので、朝まで楽しむ決意で臨まない限りは終電までに帰れるようスケジュールを組むのが普通かと思います。だったら昼間行けば良いじゃないか!と思うかもしれませんが、夜のアートってのが特別なテンションに繋がって良いわけであります。私は16時を目処に六本木入りしました。

例年通りアートナイトを楽しむ散策ルートは東京ミッドタウンから。地下鉄六本木駅から地上へ向かうこのガレリア付近でも毎年何かしらの展示やパフォーマンスが行われています。Street Museumと名付けられたこのエリアは小さな展示物がいくつか並んでおりました。が、よくよく見ると看板に3.15〜5.26と書かれていますからこれらはアートナイトとは無関係の展示かもしれませんね。

一番最初に目についたのがこの作品。撮影の仕方が悪かったので、どう見ても形の崩れた椅子にしか見えませんが、これ実際に肉眼で見ると立体的な椅子の絵に見えるんですよね。仕組みは簡単で、5mm厚くらいのアクリル板に各パーツをブロックごとに書き込んであり、手前のパーツは手前のアクリル板に、奥のパーツは奥のアクリル板に、それを重ね合わせれば透明のアクリルブロックの中に立体的な絵が浮き上がるという原理。

まあ見れば誰しも「ふ〜ん」と納得のシンプルな作品ではあるのですが、これが意外と存在感があって面白かったですね。

ただ、如何せん椅子のラインがガタガタで小学生が書いた絵みたい...と思うかもしれませんが、そこにもちゃんとした理由があって、立体的なオブジェのように展示されているこの絵は最終的な形であって、ここにたどり着くまでには多くの人の手書きプロセスが隠されていました。

この絵は最初にマスターとして書かれた椅子の絵にトレシングペーパーを重ね、次の人にそれをなぞるようにして書いてもらう。そして写しとったトレシングペーパーを今度はマスターとして次の人に再びなぞるようにして書いてもらう。それを何十人かの人にお願いをしアナログで曖昧な人の手を介在することで、原型が丸みをおびた作品に形を変えていく。だからこの作品のタイトルは ”意図をほぐす” なんだそうです。なるほどなという感じ。AIには出来ないような事を人の手で作り出す...そういう気持ちが込められているようです。

このエリアを見ている人は毎年特徴的なスタイルの人が多いように思います。それは良い意味で見ている人自身もアーティスティックと言いますか。

例えば真っ赤な口紅を塗った女性が街のショーウィンドウに並ぶ赤い靴に気持ちを引かれるように、人というのはどこか自分の好みを目の前の対象に重ねるようなところがある気がしていて、こうしたアートイベントでは展示物とそれを見に来ている人々の両方を対象的に見るのも面白いと思っています。

だからちょっと意地悪な見方をすると、たとえば男女のカップルがイベントに来ていて、女性が「わ〜綺麗これ見てみて」なんて発したと思えば、すかさず男性が「ああホントだ綺麗だね、この渦巻きのところとか」みたいな会話がされていると、なんとなく男性の方が表面的に返事を返しているんだな!みたいなのが見えてきちゃうんですよね。着ている洋服とか持っているバッグとか履いている靴とか、なんなら髪型とか、そういった複合的な要素から、普段なら目の前に並ぶピンクの渦巻きオブジェには興味を示さないだろうなぁってことが想像されて...。アートな展示物って人によって好みがはっきり分かれますからそういう内面的な事まで表に出やすい気がするんですよね。

いよいよドローンもアートに使われる時代がやってきたのかと、遠くから早足で近づいてみたところどう見てもこのドローンは飛ばすことが目的ではないようでした。説明パネルに掲載されていた2次元バーコードを読み取りスマートフォンから展示内容にアクセスしてみると、どうやらこの出店者は ”東京減点女子医大” という架空の大学をアーティスト名としているようです。

その意図は、医療界の女性差別問題を浮き彫りにすべく立ち上がったとされていて、今回のドローン展示は ”男性ドクターを日本各地の病院に配送” するという意味が込められているそう。

まあ気持ちはわかりますが、設定としては非現実的すぎてそれをこのドローン展示だけで伝えようというのはいささか無理があるかなというのが私の率直な感想。本気で医療界の問題を訴えたいのか、シャレでこういうものを作って展示しているのかその点が曖昧になりすぎてしまっていると思いましたね。アートイベントですからどちらかというと作品をきっかけに一人でも多くの人に医療界の現実を知ってもらえたら...という意図なのかもしれませんね。

まあ何にしてもそこそこ大きなサイズのこれを作るのは大変だったと思います。

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